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枕の人間工学

●はじめに

多くの人は毎日約8時間の睡眠をとっている。1日の 1/3つまり人生の1/3は眠ることであり、寝具を使用することでもある。

この睡眠をより快適なものとするために作られた寝具類が、製作の段階で不都合があったり、折角の良い寝具もその使用方法に誤りがあったりして、睡眠の妨げとなり、あるいはもろもろの病気をひき起す原因となるようなことはあってはならない。

健康面からもその機能的な特性は重視されるべきであり、寝具類が見掛けや感性だけで作られたり、選択されたりすることは、大変な誤りである。

私たちが眠る時には、敷ふとん・マットレス・掛けふとん・枕・毛布・寝衣・タオルケット・シーツ・カバ―類・・・など多くの種類や品種の寝具類を、季節・寝室環境・健康状態・風習などのさまざまな条件に対応して、多様な組合せを考えながら使用している。

寝具は毎日身近にあって使用しているものでありながら、科学的な研究については他の商品と比較して多いとは言われない。枕については更に少ないようである。寝具類全般にわたる事項については次の機会に詳しく述べることとし、今回は枕に要求されるべき特性について、枕を構成する材料、構造、使用方法や効果などについて材料学・消費科学・人間工学・衛生学・生理学・解剖学等の総合的見地からこれ迄に研究し、発表された諸先輩・諸先生の報文を参考にしながら、枕は如何にあるべきかについて考えてみたい。

枕は使用する人の体形、寝姿、習慣、体調などのほか、季節ごとの気候や寝床気候の相違、敷きふとんやマットレスの硬軟、弾性の強弱、流行などさまざまな違いもあって、同一の枕ですべてのひとが十分満足できるということは難しいことである。

しかし人は自分の健康管理の面からも、出来得る限り自分に最適な枕を望むこともまた当然のことでもある。

枕は寸法、材質、構造などさまざまな仕様の相違で機能の特性も変わり、使用する方法によっても違いが出てくる。

枕の寸法の内の高さだけを見ても、髷のあった江戸時代でも「寿命三寸楽四寸」(守貞漫稿)と長命のためには低い三寸(約9cm)の枕の方がよいとしている。しかし現代では体形や寝床環境の相違もあるので、この高さでも多くの人にとっては高過ぎるようである。

古来から「こぶしの高さ」がよいとの言い伝えがあったり、地方によっては「小指の長さ」「親指の長さ」などとも言われている。研究結果から6~8cmくらいがよいとの学者の報告や、最近の日本人の体形の変化や習慣で更に低い方がよいという研究者の>意見もあるなど高さ一つをとってもなかなか難しいこともあるが興味の深い問題でもある。

頭部は体の中でも最も重要なところであり、頭部並びにこれに関連するすべてが大切にされなければならない。

頭蓋骨の中にはおよそ140億の細胞からなる脳が収められている。脳は1.3~1.4・の重量ながら最優秀な機能を持つコンピュ―タ―も及ばない偉大な能力をもっている。機能と構造から大脳(大脳皮質・大脳辺縁系・大脳基底核)、間脳、小脳、脳幹とに分けられ、それぞれ私たちの身体を支える重要な仕事をしている。

首は狭いところに神経・血管・食道・気管・筋肉・頚椎骨などが集中 する重要な部分であり、皮膚も薄い。また頭部を支えているところでも ある。

大脳からの命令は神経により身体各所に伝達されるが、途中で何らかの不自然な刺激があると筋肉や神経を疲労させ不快な症状の原因となる。

長い時間同じ姿勢では欝血が起きるし、首や肩を動かすことは肩こりや首のこりの防止にも役立つので、寝相などは気にかけることなく気ままに寝返りができるような寝具であり、枕であることが望ましい。

枕の良否は枕だけではなく使用される寝具全部との調和の上から考えられなければならない問題でもある。

 

●時代と睡眠環境

地球は46億年ほど前に太陽系のガスやちりが集まってできたものと考えられているが、地球上の生物が発生したのは30~35億年ほど前からといわれている。ヒトの祖先は化石人類と総称されている。化石人類の位置づけにしても研究者の意見は必ずしも一致しているわけではないが、ヒトの進化は猿人(300万年~100万年ほど前)ー原人(100万年~50万年ほど前)ー旧人(15万年~3.5万年ほど前)ー新人(3万年~1万年ほど前)の順に進化したものと考えられている。

学者の研究によって原人の時代には火や土器、石器を使用していたことが知られているが、火で多少の明かりが得られるようになるまでは他の多くの動物と同じように、日の出と共に起きて食料を求めて歩き回り、日没近くになるとねぐらに戻って眠るという自然の明るさに合わせた生活のくり返しであったものと想像される。

火を使用するようになってからは火によって猛獣の危険から護られることを知りまた火による少ない明かりであっても、ねぐらの中で夜の動きも可能となって、ねぐらの中での生活も少しづつ変化するようになった。昼や夜の自然の明暗による生活にも変化があらわれ、睡眠についての眠る起きるのサイクルにも少しづつ変化がみられるようになった。

長い年月の間に人の生活様式も変って一段と複雑となった。現代の都市化された社会では人は必要に応じて24時間いつでも明るさが得られるようになり、職業も多様化して夜間での就業人口も増え、国際化が進むにつれて人の就眠時間はますます不規則なものとなり、職住間の遠隔化もあって睡眠時間も短縮されて周囲の環境は睡眠のためには必ずしもよくはなっていない。

人の睡眠が質も量も共に低下しつつあるといえる現代の社会環境にあって、おのおのに適合したよい睡眠を得るためにはどのようにしたらよいのか、これからの大きな課題である。


 

●動物の睡眠時間

同種の動物であっても個々の生活環境、年齢、性別、健康状態の相違もあるので睡眠量にも差ができるが一般的には家で飼われている動物の睡眠時間は長く、同種の動物でも野生のものの睡眠時間は短い。

研究者の報告がある。

表1 動物の1日当りの推定睡眠量Meddis,R,"Sleep Instinct" R.K.paul,London (1977)

                       (『睡眠』井上 昌次郎 著 化学同人社より)

時  間 種    別
24-21  
20 フタツユビナマケモノ(オオナマケモノ)
19 キタオポッサム、オオチャイロコウモリ、コチャイロコウモリ、ミズオポッサム
18 ジュウニオビアルマジロ(オオアルマジロ)
17 ヨザル、ココノオビアルマジロ
16 ホッキョクジリス
15 ツバイ
14 ネコ、ハムスター(ゴールデンハムスター)
13 ハツカネズミ(マウス)、ネズミ(ラット)、ハイイロオオカミ、ジリス、テンレック、ユビムス
12 ホッキョクギツネ、チンチラ(ケイトネズミ)、ゴリラ、アライグマ
11 アメリカカイリ(ビーバー)、スローロリス
10 ジャガー、ベルベットモンキー、ホシバナモグラ、パタスザル、ガラゴ、サバクハリネズミ、メクラネズミ、ヨーロッパハリネズミ
アカゲザル、チンパンジー、ヒヒ、アカギツネ
ヒト、ウサギ、テンジクネズミ(モルモット)、トウブモグラ、ブタ、ハリモグラ、アフリカオオホホネズミ
 
ハイイロアザラシ、ハイイロイワダヌキ、ブラジルバク
キノボリイワダヌキ、イワダヌキ(ハイラックス)
 
ウシ、ヤギ、アジアゾウ、アフリカゾウ、ロバ、ヒツジ
ノロジカ、ウマ

一般に草食動物の睡眠時間は短く、肉食動物の睡眠時間は長い。

肉は高タンパク、高カロリーであるが、草は低カロリーなので多量の草を採らなければならないことから採食時間も長い。

飼育されている放牧中の馬でも睡眠時間の2倍以上の時間を採食に費やしている。

牛は食物を吸収している間に採食し、休息中に反芻し消化している。

さらに、草食動物は肉食動物の捕食の対象となることが多いので、身を守るために絶えず警戒していなければならないことから睡眠は浅く時間も短い。

生物学的な諸々の要因によって、睡眠が生存に不利益なある種の動物はほとんど睡眠をしないとの報告がある。

動物によって睡眠時の特徴がみられる。

その基本的なパターンは長い不活動期、反応の低下、安全な場所の選択、特有の姿勢、1日中でほぼ同じような時刻に眠るなどであるが、高振幅徐波(ノンレム睡眠)、レム睡眠については霊長類、哺乳類、鳥類と爬虫類、両生類、魚類、軟体動物、昆虫とでは相違がある。

 

表2 睡眠時の特徴とその分布(Meddis. 1977)

  霊長類 哺乳類 鳥類 爬虫類 両生類 魚類 軟体動物 昆虫
長い不活動期
サーカディアンリズム
閾値上昇
特有な眠りの姿勢

高振幅徐波

(ノンレム睡眠)

レム睡眠

魚類・両生類などは休息はしていてもノンレム睡眠・レム睡眠はないし、下等爬虫類ではノンレム睡眠だけある。

高等爬虫類、鳥類ではノンレム睡眠とごく部分的、一時的にレム睡眠がある。

哺乳類では完全なノンレム・レム睡眠があるし、その中でもヒト(ホモサピエンス)が最も完成した睡眠サイクルを持つ動物である。


●眠りの学説

多くの人は夜になると眠りにつき、朝には目覚めて1日の活動を始める。

なぜ眠るのか、この最も身近な疑問にはいくつも仮説が立てられているものの決め手になるようなものはない。

(1) 疲労回復説

疲れが蓄積されると眠くなる。睡眠は疲労回復に必要だからという説である。これは昔から 言われている説であるが、疲労感がなくとも毎日同じような時刻になると眠くなるから疲労 だけとは言いきれないところもある。

(2) 中枢説

間脳や中脳部位が睡眠や覚醒に対して重要な役割をしているという説である。

(3) 条件反射説

緊張する時間が長くつづくと大脳皮質が疲労して内制止がおき、この部が局所的に疲労して 神経細胞の活動が抑制され、これが脳の周辺に拡がって睡眠がおきる。

(4) 刺激遮断説

刺激によって起きている感覚器の興奮を遮ることによって睡眠が起きるという説で、寝室内 を静かにしたり、暗くして光の刺激をなくすることで眠り易い環境を作っているし、温覚、 触覚、痛覚、皮膚感覚を遮ることによって眠り易くなる。

(5) 睡眠物質説

自然の眠りを誘う睡眠物質があってこれによって眠るという説である。

(6) 体内時計説

毎日同じころになると眠くなり、目覚めるべきころには目が覚める。人の体内には時計と同 じような役目をする機能がありこれを“体内時計”と呼んでいる。これは1日が24時間で はなく25時間のスケジュールで規則的にくり返されている。

(7) その他

脳貧血説、化学説などなどなどがある。


●睡眠の生理

睡眠に関する研究はここ50年位の間に急速に進められてきたが、未だ解明されていない点も少なくない。

私たちは夜になると眠くなって寝床に入り翌朝になって目覚めるが、睡眠中どのような変化があり、どのような経過をたどっているかについては自分自身で知ることはできない。

(1) 睡眠の経過と状態

睡眠の経過を脳波から見ると次のようになる。

(脳 波) (状 態)    

低振幅速波  (ベーター波13-30Hz)

                    (アルファー波8-13Hz)

目覚め(覚醒)

うとうと眠り(安静閉眠時)

   
低振幅複合波(シーター波4-8Hz) すやすや眠り(紡錘波睡眠) NREM  
紡錘波K複合波 浅いNREM NREM  
高振幅徐波(デルター波0.5-4Hz)

ぐっすり眠り

深いNREM

NREM 睡眠
低振幅速波 PGO波 REM(動睡眠・逆説睡眠) NREM 睡眠
うとうと眠り(安静閉眠時) ちょっとの刺激ですぐ目覚める。    
すやすや眠り(紡錘波睡眠) ある程度の刺激で目覚める。    
ぐっすり眠り 大声で体をゆすって目覚めさせる。    

PGO波

(Ponto-Geniculo-Occipital wave)

     
レム(REM) 睡眠に伴う相動現象開始の指標となる。    

 

(2) レム睡眠とノンレム睡眠

睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠に大別される。

1)レム睡眠(REM sleep)

眠り乍ら眼球が急速に動くことから「急速眼球運動」(Rapid Eye Movement)と呼ばれ、その頭文字からREM(レム)と名付けられた。

特徴は

①REM睡眠は80~110分ごとに繰り返し、朝近くなるに従って時間の間隔は短くなり、同時にREM睡眠の持続時間は長くなる。

②この時に夢を見ることが多い。

③全睡眠量中成人では約15~25%で年齢、体質、睡眠時間などにより差がある。

2)ノンレム睡眠(non-REM sleep)

レム睡眠以外の睡眠では急速眼球運動がないので、この睡眠期をノンレム睡眠としてレム睡眠と区別している。

(2)ノンレム睡眠(NREM sleep)

レム睡眠以外の睡眠では急速眼球運動がないので、この睡眠期をノンレム睡眠としてレム睡眠と区別している。

 

表3

 生理変化  NREM REM
眼球運動 ゆっくり はやい
筋肉緊張 覚醒時より低下 NREMより低下
心 拍 おそい はやい、乱れる
呼 吸 おそい はやい、乱れる
血 圧 下がる 乱れる
胃酸の分泌 へる ふえる
尿 量 へる 著しくへる
発 汗
陰 茎 萎縮 勃起

(3) 体内時計と睡眠

現代社会の生活では、多くの人は夜が明け朝になって目覚めてこまごまとした用事を終えて朝食をとり、昼間の日常生活に精を出し、昼食をとり、夕方になって夕食をとり、夜半には眠くなって床に就き睡眠をとる。このようなごく普通の社会人としての動きを1日24時間に割りふりして生活をしている。

また休日には朝寝をしたり、行楽のために早朝に起きたりして、自分の生活設計を立てながら社会人としての快適な日常生活をしている。そして、1日24時間には何の不自由も疑問も感じていない。

しかし、私たちに総ての社会的な生活上の規則がなくなった場合、つまり極地や地下室の生活をして時計などすべての制約をなくした場合にはちょっと様子が変ってくる。

このような条件下では私たちがもともと体内にもっているリズム(体内時計)に従って寝起きするようになる。一定の時間がくると眠くなり、目覚め、腹が空いて食事をとる。これはまた大変快適なものである。しかし、この場合は1日は25時間のリズムで動いている。私たちはもともと25時間を1日としてあるべきところを社会生活上の必要から24時間の生活をしているのである。

またこの1日25時間の中で眠くなる時が2度ある。昼食後に軽い眠気を覚えるのはこの現れである。私たちは軽い昼の睡眠と深い夜の睡眠の2つの睡眠時間を持っているからである。

半日リズムといわれるのはこのことによる。外国旅行などで時差があり、眠られなくなるのは体内時計が社会的(社会時計)な変化についていけずに起きる現象であり、赤ちゃんや老人の眠りが成人と異なるのは、この時代には社会的制約が少なく体内リズムによることが多いからである。

 

(4) 加齢と睡眠の変化

動物は新生児ほど長い時間眠り、成長するにつれて眠りの時間は短くなる。人間の場合も同様で年齢と睡眠時間には相関が見られる。

1) 睡眠リズムの変化

①多相性睡眠(睡眠時間が昼夜1日に2度以上)

新生児 3~4時間ごとに目覚めながら1日16~17時間以上の睡眠
3~4ヶ月 昼眠4~5時間、夜眠10時間 計14~15時間

6ヶ月~1歳

昼眠6~7時間、夜眠6~7時間 計12~14時間
4才 昼眠3時間、夜眠8時間 計11時間
老人 昼眠1~2時間、夜眠6~7時間 計8時間

②単相性睡眠(夜眠だけ)

6~10才 夜眠10時間

成人

7~8時間

2) ノンレム、レム睡眠の変化

①1日の全睡眠時間中のレム睡眠時間の割合

新生児 50%
生後3~5ヶ月 40%

生後6ヶ月~23ヶ月

30%
3~5才 20%
19~30才 22%
33~45才 18.9%
50~70才 15%
70~85才 13.8%

成長期ではレム睡眠の割合に変化があるが、成人後にはその割合の変化は少ない。

②1日の全睡眠時間中のノンレム睡眠時間の割合

新生児から生後23か月の間ではノンレム睡眠の割合は増加するが、その後すこ しずつ低下する。50才以降では更に低下率が高くなる。

図3 1日の平均睡眠時間の分析(看護婦400名)

(5) 睡眠の個人差について

1)長時間睡眠と短時間睡眠

成人における一般的な睡眠時間は7~8時間であるが各個人の性格、生活、習慣の相違から睡眠時間に長短が生ずる。大別して長時間睡眠 (9~11時間)短時間睡眠(4~6時間)としている。

鳥井鎮夫は睡眠時間と性格について、睡眠時間の個人差は性格とも関係があるようであるとしている。つまり長時間睡眠の人には内向性の人、生真面目で反省心の強い人が多く、短時間睡眠の人には外向性であまりくよくよしない悩みを持ち込まない人が多いとしている。

長時間の睡眠ではアインシュタインが有名であり、彼はバイオリンを弾きモッアルトのファンで芸術的センスに恵まれていた。芸術家肌で自分を大切にするタイプ。

短時間睡眠では、ナポレオン、エジソンが有名である。社長、猛烈社員に多いタイプ。

長時間睡眠の人、短時間睡眠の人はいずれも6~7%あるといわれている。

また仕事がうまくいっている時などでは睡眠時間は短く、仕事がうまくいっていない時などで落ち込んでいる時は睡眠時間は長い。

職場が変って不慣れな時は睡眠時間は長くなり、慣れるにつれて睡眠時間は戻るようになる。

2) 就眠の時刻

朝型の人と夜型の人とがある。

朝型の人は早寝早起きで目覚めも良く、精神的にも肉体的にも午前中が充実している。就寝時刻は早い。

夜型の人は朝の目覚めが悪く、午前中は活力に乏しく午後になってから元気が出る。夜は遅くとも平気で就寝時刻は遅い。

このような違いは肉体的な相違によるものか環境の違いによるものかは明確でない。

通常体温は目覚めの少し前ごろに最低となり夕方から夜にかけて体温は上昇する。体温が最高値となる時刻は朝型は夜型よりも約1~5時間くらい時間帯が早くなっている。

朝型の人の体温は夕方時ころに最高となり夜中の2時ころに最低となっている。夜型の人では5時間ほどのずれがあって夜11時ころが最高となる。体温の高い時は代謝も盛んで元気がよいが夜中に体温が高いと眠り難く、昼間に体温が低いと眠気がする。

これに対応するには、夜型なら夜型でもよいから、生活リズムを変えずに眠る時間特に起きる時間を一定にするとよいとしている。これによって体の方でこれに合わせていろいろな機能が順調に作動する。夜型にしたり昼型にしたりして生活リズムを変えるといろいろな故障が起きるとしている。

3)睡眠の質

一般には就寝から入眠するまでの時間と中途の目覚め回数とで安眠型と不眠型に分けられる。

安眠型は入眠までの時間が10分以内で中途の目覚めがなく、ぐっすりとよく眠る型である。朝型の人や短時間睡眠の人に多い。

不眠型は入眠までの時間が30分以上かかり、且つ中途の目覚めがある場合で、一般に眠りが浅い。また不眠型は安眠型と比較すると睡眠中の体温が高く、脈拍数も多いという。これは不眠型は交感神経の活動が安眠型よりも大きいことによる。

不眠型は夜型の人や長時間睡眠の人に多い。また、自分の睡眠タイプに合わなくても環境や職業によって合わせなければならないことも多い。


●睡眠障害

(1) 健康な人の睡眠障害

1) 環境によるもの

大きすぎる音、不快な音、暑すぎる、寒すぎる、むしむしする、不快な臭気、床が変る、明かるすぎる、不快な震動、寝具の不快な感触など。

2) 精神的なもの

心配事がある、不慣れな処での緊張感、興奮が静まらないなど。

3) 肉体的苦痛や不快を伴うもの

(2) 病気としての睡眠障害

睡眠障害が続くようなことが起きれば病院へ行くべきであるが、大別すると

1) 不眠症

入眠障害(寝付きが悪い)、中途覚醒(夜中にたびたび目がさめる)、熟眠障害(ぐっすり眠れない)、早朝覚醒(朝の目覚めが早過ぎる)などの症状がある。原因もまたさまざまで、外傷、頻尿、多尿、ホルモン異常、睡眠時呼吸不全、老年性不眠や、うつ病、精神分裂病、躁病、老年痴呆、脳の病気など精神障害によることも多い。

2) 過眠症

日中の眠気と居眠りがあり、且つ眠ったあとでも疲れが抜けずにまだ眠気がとれない。原因 は、過度の睡眠不足、極度の疲労、体力の消耗する病気の回復期、不安、ストレス、抑うつ状態、ビックウィク症候群、睡眠時無呼吸症やナルコレプシ-などである。

3) 睡眠相遅延症候群

体内時計が周囲の環境リズムに同調できないために睡眠・覚醒のリズムはずれができたことから起る。慢性の時差ボケの感じなど。

4) 夢中遊行、夜尿など睡眠に伴う特有の異常な現象などがあげられる。


●よい眠り

よい眠りは寝付きがよくて、ぐっすり眠れて、朝にはさわやかに目覚め、健康で壮快な気分になれることである。それには睡眠が量的に充分であると共に質的にも良好でなければならない。このようなよい眠りを得るためには健康、食事、住環境、寝室環境と共に寝具類の良否によることが多い。

(1) 寝付きがよい

寝床に入って寝付くまでの時間は人によって差があるが、この時間が長いほど寝付きが悪いと呼ばれる。また、ちょっとした刺激ですぐ目覚めてしまう浅い眠りが続くことも同様である。

私共のアンケ―ト調査ではみずから寝付きはよい方であると解答された人のほとんどは10分前後の間には眠っている。寝付きのよいと答えた人でも心配事があったり、病気で体調が正常でない時は当然ながら寝付きが悪いと解答している。寝付きを良くするためには心身の健康と心地よい寝具による環境作りが充分でなければならない。

(2) よくねむる

ぐっすり、たっぷり眠ることである。つまり、眠りの量も質も満足すべき状態であることである。それには

〇 徐波睡眠の量と質(深さ)がよいこと

〇 レム睡眠の量が適量であること

〇 レム睡眠とノンレム睡眠のサイクルが正常であること。

 特に入眠直後の深い眠りが大切である。

(3) 目覚めがよい

同じ就寝環境で同じ長さの時間の睡眠であっても、目覚めの良さはレム睡眠の中でどのような時点で目覚めたかで、さわやかさ感が異なってくる。

〇 深いノンレム睡眠期の状態の時に目覚めると、未だ眠気が多く残っているのでぼんやりとして気分も甚だよくない。

〇 ノンレム睡眠の中途で目覚めると前者のような深いノンレム睡眠からの目覚めの時よりも軽いものの、気分すっきりとは言い難い。

〇 ノンレム睡眠が終わってレム睡眠に入ってから目覚めた時にはさわやかなよい目覚めとなる。レム睡眠の時間が朝方になるほど長くなることはさわやかなよい目覚めを得るための条件として大変都合がよいことである。


●よい寝具

快適に眠るためのもろもろの条件の内でも寝具の持つ役割は大きい。寝具には下敷きとされる敷きふとん、マットレス、シ―ツ類、寝台などと、上掛けとして使用される掛けふとん、毛布、タオルケット、カバ―類、及び、直接身につける寝衣類と枕などがあり、更にこれらの寝具類には、大小、厚薄、重い軽い、色、柄、デザインなどの異なる数多くの種類がある。

人は、習慣や自分の好みによって工夫を凝らして最もよい睡眠環境を作り出し、快適な眠りを期待しながら使用している。

快眠のための最適な寝床気候を得るためには、吸湿性、透湿性、保温性と、適度な弾性が必要であり、これらの条件を満すための充分な寸法、材質、仕様であり、快い眠りを誘う雰囲気のある色彩、デザイン、柄であり、更には日常の取扱に便利な軽さと洗濯などの手入管理が容易で且つ丈夫であり、経済的負担も軽いというもろもろの条件を満たされていなければならない。

(1) 吸湿性と透湿性

私たちは睡眠中でも不感蒸泄の形で絶えず皮膚から水分を蒸発させている。この水分は個人差はあるが、およそ1時間に20・~40・くらいで、1晩で160~320・ほどの水分を出している。この水分はふとんが吸収し次いで空中に放散することが望まれる。これには寝床中に体から蒸発された水分を繊維自体が吸収する吸湿性と、繊維と繊維の間を通って水分の低い外部に放散させる透湿性とがある。寝具にはこの吸湿、排湿及び透湿機能が果たせるような材料の選択と仕様が必要である。

(2) 保温

私たちは体温を37℃内外に保つことによって健全な生命現象を保つことができる。この恒体温を維持するのは食物として取った含水炭素、蛋白質、脂肪などが体内で酸化する過程で作られる産熱によるものである。この産熱量は呼吸によって消費された酸素の量と呼出された二酸化炭素の量を測ることよって計出される。

更にこの熱は血液やリンパ液が体内各処に送り体を暖めてから外部に放出される。水分の蒸発によって体の表面から放散される熱は、汗1gにつき0.58Calである。これは湿性放熱又は蒸発放熱と呼ばれるものである。これらの放熱は発汗量が多いほど大きいが、放熱は皮膚血管を収縮あるいは拡張することによって調節され、体温はこの産熱量と放熱量のバランスによって保たれている。

(3) 寝床気候

寝具は人体表面の放熱を調節することによって、外部とは異なった気候条件をつくっている。この時には最も快適な寝床気候であることが望ましい。これまで多くの研究者によって快適寝床気候は温度はおよそ32±1℃で湿度50±10%くらいがよいとされこれより上でも下でも快適性は損なわれる。これらの温度、湿度の快適な条件を保持するためには、空間、音、明暗、色彩、震動などの寝室環境と共に食事、体調、寝具の条件などが良好であることが肝要である。寝具の保温は繊維自体、繊維間の空間、ふとん、毛布、タオル製品、カバ―類などの使用時の各層の間の空気、水分量、更にはこれらの移動性など、さまざまな条件によって変化する。保温には、適当な空気の量があり、且つこれが移動しないことなどが必要である。


●よい枕

就寝中の姿勢に無理がなく、ごく自然な形になるように頭けい部を適度な硬さと弾性で支えるのが枕である。しかしただ機械的に支えるだけではなく、頭けい部及び周辺から出される水分や熱を吸収してこれを外部に排出すると共に、枕を構成する素材の通気性や吸排湿性・吸排熱性によって頭けい部及び周辺の温度及び湿度を調整する重要な機能を果たすものでなければならない。

また、昔から云われている“頭寒足熱”についても学者の研究によってその重要さが証明されている。睡眠中の枕のよい高さは使用する人の体形、寝ぐせ、敷きふとんの弾性などで差がある。また、睡眠中の寝返りによる高さの変化に対しても対応できるよう、枕の長さ、巾、高さ等の寸法や構造が適切であり、中材や側布についても吸排湿、吸排熱、通気の機能を持ち、側布は丈夫で、色、柄、デザインは睡眠環境に適応するものでなければならない。特に枕の高さは敷ふとんやマットレスの硬軟、弾性とも関連するので、いろいろな条件を考え合せてつくられ、使用されるべきである。だいじな頭をあずける枕であるから、枕ぐらいと言わずに大切に考えたい。

よい枕とは

○自然で無理のない寝姿となるよう、頭けい部を支えられる大きさと形であること。

○頭けい部とその周辺の温度、湿度を調整して睡眠環境をよくする材料や構造であること。

○敷きふとんの弾性に対応した、よい高さであること。

○色、柄、デザインなどが睡眠環境によいこと。

○丈夫で経済的であること。

 などがあげられる。

(1) 自然で無理のない寝姿となるよう、頭けい部を支えられる大きさと形であること

枕の大きさは長さが肩幅、幅は首部から頭頂までの長さがあればよいが、現在の市販の枕はいずれも長さ40┰、幅20┰以上あるので大きさについては心配はない。しかし、これよりやや大きくとった方が少々寝相の悪い方でも安心できる。目安としては長さは肩幅+10┰以上、幅は第7頚椎骨から頭頂まで+5┰ほどあれば更によい。眠る時くらいは気がねなくのびのびと寝たいものである。

枕のよい高さは体形、寝ぐせ、習慣、敷きふとんの硬軟、弾性などの影響で個人差があるので、現在使用中の枕の内で一番具合のよい枕の使用時の高さを参考にするとよい。

市販されている枕には使用後の枕の高さの低下することを見込んでやや高めに作られていることが多いので、購入する時はちょうどかやや低めのものを選んで、自分に合うよう布など入れて、高さを調節した方が使いやすい枕となる。形については、特殊なものでない限り問題はないが、動物や花の形の枕でも、枕として極端に不自然なものは避けるべきである。

髷があったので丈の高いまくらが使われていた江戸時代でも「寿命三寸、楽四寸」(守貞漫稿)として、長寿のためには三寸(約9cm)の低い枕のほうがよいとしているが、現代では寝床環境や体形の違いもあって、9cmでは高い方に入る。

(2) 頭けい部及びその周辺の温度、湿度を調整して睡眠環境をよくするものであること

頭けい部に熱や湿度がこもることはよくない。一般的には皮膚温よりも5~8℃くらい低い方がよいとされている。これには側布や詰め物の種類や性能が関係するので特に気をつけたいところである。

側材については吸湿性、排湿性、通気性のある素材がよく、この点から綿、麻、レーヨンは適品と言える。枕カバー、ピローケースなどについても同じである。

中材となる詰物は、吸湿、排湿性と共に吸熱排熱性のよいものであり、かつ、通気性のよいものがよい。

昔から使用されているソバがらはその点大変理想的である。しかし最近の製粉技術の違いから、ソバがらが3枚がらなっているので詰め物とした場合には通気性に優れてよいものの、不正形な実や未熟な実、また僅かながらソバ粉の混入もあって、虫害の原因ともなっている。

明治時代以前のように石うすで丁寧にひき、殻も全部一枚にばらばらになり、ひき残しやソバ粉の残留が全くないようなものは理想的であるが、最近は実や残留するソバ粉による虫害もあって、使用も減少している。もちろん、これらの欠点を除く加工がされたソバがらが理想的であることは間違いないが、ソバがら枕は価格が安いというこれまでのイメージがあって、詰め物として再生するための加工賃をかけることをさまたげている傾向もあって生産は多くない。一枚がらのソバがらは一部の寝具専門店では販売されている。

径1cmほどの竹の細いものを長さ1~2cmに切って詰め物とした、竹パイプ枕もある。吸湿性がよくなるように油抜きの加工がしてあるので、素材としての吸湿、排湿性もあり、加えていずれも中空なので通気性もよく、一見凹凸が気になるが、思いのほか、頭への当たりも、使い心地もよい。丸洗いも可能で衛生的であるが、価格は他の枕と比べて2~4倍と高いのが難点とも言える。竹の種類も限られているので生産も多くはない。

プラスチックパイプは値段も安く通気性があり一般的とも言える。ただし、パイプの素材自体には竹と違って吸湿性はないが、中材の汚染は少なく、丸洗いも可能で衛生的とも言える。柔らかい羽毛よりは硬くて、長く粗い羽根の方が通気性もよく弾性も羽毛よりは低いので枕に適している。

その他パンヤ、もみがら、小豆、茶葉などが使われている。種類による特性には相違もあるが、いずれも枕の詰め物に適している材料である。

(3) 敷きふとんの弾性に対応した、よい高さであること

敷きふとんやマットレスなどのように下に敷かれるものが柔らか過ぎると体重のかかるしりの部分と胸部が沈んで体型がW型になる。つまり頭と足の部分が高く、しりと背の部分が低くなる。このような時には敷の方を直さなければならないが、それまでは枕を低くして調節する。硬わたの敷きふとんや硬質のマットがよいとされるのはこのためでもある。敷かれるものの硬柔に応じて枕の高さが調整できる構造が望ましい。

(4)色、柄、デザイン等が睡眠環境によいこと

あまりけばけばしい色や柄は寝室の落ちつきを失うし、濃色は汚れも分かりにくい。寝室の落ちついた静かな雰囲気を誘うような色柄であり、清潔感のあるものを選ぶべきである。市販のものはこの点も考慮に入れて作られているので、多くの商品については心配はない。

(5) 丈夫で経済的であること

枕の側布は詰め物が入っていて簡単に取り換えや洗濯ができないので、丈夫で詰め物のソバがらなどが細かになって布目からでないよう、織り目の密なものがよい。枕カバーやピローケースは汚れがはげしいので、どんどん洗濯できる材質であることが必要であり、素材の吸排湿も必要なので側布の素材としては綿が最適である。特殊なものでない限り値段も高くないので使いやすい。


●側布について

(1) 繊維の種類と水分に対する性能

1) 吸湿性

繊維の吸湿性は、繊維自体のを構成する高分子化合物がもつ「親水基」によるものが多い。この親水基には、ヒドロキシル基(―OH),アミノ基(―NH),カルボキシル基(―COOH),アミド基(―NHCO)がある。これらは水素結合によって水分を吸着させる性質をもっているので吸湿することが容易となる。

①セルロ―ズ繊維(植物性繊維)(綿、麻、亜麻、レ―ヨン、キュ―プラなど)

主成分であるセルロ―ズは多くのヒドロキシル基(―OH)があり、吸湿性は大きい。

②蛋白繊維(動物性繊維)(羊毛、絹、獣毛)

主成分である蛋白質はアミノ酸の重合したものであり、分子中にアミノ基、カルボキシル基、アミド基があり、吸湿性は大きい。

③ナイロン(合成繊維)

分子中にアミド基を、分子の末端にアミノ基、カルボキシル基をもっているが、蛋白繊維より数が少ないので吸湿性は少ない。しかし、合成繊維の中では吸湿性はある方である。

④ポリエステル(合成繊維)

分子の末端だけにヒドロキシル基、カルボキシル基がある。吸湿性はナイロンより少ない。

⑤アクリル繊維(合成繊維)

アクリロニトルが主成分で吸湿性は少ない。

2) 透湿性

湿気が繊維と繊維の間を通って一方から入り反対方向に抜ける性質で吸湿性の少ない繊維でも、通気性があれば透湿性がある。集合状態が粗ければ植物性繊維や動物性繊維より親水基のない繊維で吸湿性がなくても、透湿によって寝床内の湿度に対応することができる。しかし、吸湿性のない合成繊維のふとんわたのような場合は、押しつぶされて繊維集合体の密度が大きくなると通気性の低下とともに透湿性も低下するので、加重の大きい敷ふとんやパットに使用することはそのままでは適当ではない。

3) 吸水性

繊維と繊維の間に水分が吸収される性質で、繊維自体に吸湿性のない場合でも表面がぬれる状態で隙間が適当であると、毛細管現象で繊維全体の隙間に浸透することが出来るので、発汗が多い時の寝衣の場合は吸湿性、透湿性と共に重要な性質となる。

4) 撥水性

吸水性の逆現象で繊維の表面が水を撥いて侵入を防止する性質で棉花の場合でも新しく採取されたものはロウなどの疎水性の成分が綿繊維の外膜中に含まれているので、撥水性がある。加工することによってセルロ―ズが露出されてから吸湿・吸水性をもつようになる。繊維自体の内部に多くの親水基をもつ羊毛も表面が撥水性のある物質で覆われているので水を撥く性質がある。

5) 水分率

親水性は水分率によって示される。

水分率(%)= 乾燥時繊維重量/吸湿時繊維重量―乾燥時繊維重量 ×100

詳細については各種繊維の性能表を参照

6) 合成繊維の改質

繊維を紡糸する時に別成分を混入して繊維の中に直径0.01~ 3μmの孔を多数作ることにより、天然繊維に近い水分を吸収するポリエステル繊維、アクリル繊維が作られている。これらの加工された合成繊維は親水性に乏しいので脱水が容易であり、乾燥も早いことから、将来多く利用されることと思われる。

(2) 繊維の種類と性能

1)繊維の分類

表4

天然繊維 植物繊維 種子毛繊維 綿、カポック(パンヤ)
靱皮繊維 麻・亜麻・苧麻(ラミー)・大麻・黄麻(ジュート)
葉脈繊維 マニラ麻・サイザル麻
その他 ヤシ・イグサ・バショウ・サボテン
動物繊維 獣毛繊維 毛…羊毛・カシミヤ・モヘヤ・アルパカ・ヤク・ラクダ・ウサギ
繭繊維 絹…家蚕絹…野蚕絹
鉱物繊維 石綿(アスベスト)
天然繊維 再生繊維 セルローズ系 レーヨン レーヨン・ポリノジック
キュプラ  
半合成繊維 セルローズ系 アセテート アセテート・トリアセテート
たんぱく質系 プロミックス  
合成繊維 ポリアミド系 ナイロン ナイロン6・ナイロン66
ポリエステル系 ポリエステル  
ポリアクリルニトリル系 アクリル アクリル・アクリル系
ポリビニルアルコール系 ビニロン  
ポリ塩化ビニル系 ポリ塩化ビニル  
ポリ塩化ビニリデン系 ビニリデン  
ポリエチレン系 ポリエチレン  
ポリプロピレン系 ポリプロピレン  
ポリウレタン系 ポリウレタン  
ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系 ベンゾエート  
ポリクラール    
その他

ポリテトラフルオロエチレン系

ポリ青化ビニリデン系

ポリ尿素系

 
無機繊維 ガラス繊維 ガラス  
金属繊維 金糸・銀糸・銅糸・スチール繊維  
炭素繊維    
岩石繊維 ロックウール・ロックファイバー  
鉱滓繊維 スラッグファイバー  

注:ゴシック文字は家庭用品品質表示で規定された繊維名(統一文字)

2)各種繊維の性能

各種繊維の機能表・・・衣生活の科学(酒井豊子編より)

 3) 防虫、防黴性

①よいもの

ポリエステル、アクリル、ポリ塩化ビニール、ビニリデン、ナイロン、ビニロンなどの合成繊維類

②ややよいもの

レーヨン、アセテートなどの再生繊維類

③弱いもの

羊毛、絹、綿など

4) アイロンの適温(℃)

麻、綿(190℃)、絹(140)、羊毛(160)、レーヨン、キュープラ、ポリエステル(110~150)、アセテート、ビニロン、ナイロン、アクリル(110~130)、アクリル系、ポリプ ロピレン、ポリウレタン(90~110)

ただし、繊維組成、厚さ、水分の有無、アイロンの圧力、アイロン使用時間の長短などによって差がある。

5) ドレーブ係数(%)

キュープラトリコット(23.0)、ナイロントリコット(28.0)、絹デシン(30.0)、キュープラデシン(35.0)、ウールモスリン(48.0)、100番綿ブロード(51.0)、不織布(ナイロン65%,ポリエステル35%)(56.0)、40番綿ブロード(59.0)、ポリエステルデシン(60.0)、不織布ナイロン(100%)(72.5)アセテートタフタ(85.5)

6) 熱伝導率(CAl/㎠/sec/℃)

水(0.0014)、空気(0.000056)、絹(0.000887)、羊毛(0.000479)綿(0.00014)

7) 通気量 (㎤/sec/㎠)

綿ブロード(12~15)、デシン(45~53)、絹(14匁)(42)、シルクサテン(10~20)、両面編み(137)、トリコットハーフ(250~429)などであるが、加工の有無、種類、程度等で差がある。

8)接触温冷感

①温感:熱伝導率が低い、熱容量が低い、接触面積小

②冷感:熱伝導率が高い、熱容量が高い、接触面積大

(3) 繊維の成分

1) 綿繊維

最も代表的な種子毛繊維である。産地・品種によって長さ、太さ、色彩、光沢などに差がある。一般に在来種(野生種)は太くて短く、改良種(米綿種)は細くて長い。

主成分はセルローズで親水性のある水酸基が多いので吸湿性、吸水性に富む。セルローズ以外の成分は表面部分にあるので採取の新しい綿には撥水性がある。酸には弱いが、アルカリに強いので弱アルカリ性の洗剤に対しての耐久力があり、性能的にも経済的にもよく、使用範囲が広い。

     表6 綿 繊 維

成 分 含有割合(%)

セルローズ

94.0
たんぱく質 1.3
灰   分 1.2
ペクチン 0.9
有 機 酸 0.8
ろう・油脂 0.6
糖   類 0.3
色   素 微量
そ の 他 0.9

セルローズの化学構造

表7 綿繊維の長さと太さ〔J. Text. Inst.,42. S71(1961)〕

綿繊維 長さ(mm)   太さ
  平均 最大  
インド綿 10~20 20~36 14.5~22
米綿 16~30 24~48 13.5~17
エジプト綿 20~32 36~52 12~14.5
海島綿 26~28 50~64 11.5~13

綿繊維の形態

最外層部の表皮はワックス、ペクチン、脂肪からなっている。

第1次層は主にセルローズで、他にペクチン、蛋白質などからなる。

第2次層(s1~s3)は綿繊維の主成分で約95%ほどを占めている。この部

は薄い層をしたラメラからなっている。

ラメラはマイクロフィブル(100本ほどのセルロース分子)(5~6?)からできている。

これらは20~30°のらせん状構造をしている。

綿繊維の断面

綿繊維の断面は図のように圧しつぶされたようになっていて、図のCとNの部分がいたみ易い。

2) 麻

天然繊維中最大の引張強度があり、綿のように湿ると強くなる。吸湿・吸水性がよい。セルローズが主成分であるが、綿に比べて分子の配列がよい。比較的に熱伝 導率が大きく、吸排湿が速いので清涼感がある。

3) 羊毛

家畜羊の歴史は長く、改良が重ねられて種類も多い。品種よってまた産地によっても羊毛の太さ、長さ、クリンプ、色彩、光沢などに差がある。

軟毛のウールと粗毛のヘァーがある。

羊毛の構造は表皮(キューテクル)と皮質(コルテックス)があり、表皮の大部分は鱗片(スケール)で覆われている。この鱗片は、根本から先端に向って逆方向に積み重なっている。表皮の外側は疎水性のあるエピーキューテクルの層があり、この層は粒子の小さい湿気は通すが粒子の大きい水は通さないので、吸湿性は大きいが撥水性がある。

羊毛のコルテックスは吸水性の多いオルソコルテクスと、吸水性の少ないパラコルテックスとの2相構造なので特有のちぢれを作っている。

表8 羊毛ケラチンのアミノ酸組成(モル%)

成分 モル%
シスチン 11.59
グルタミン酸 11.55
セリン 11.41
グリシン 10.12
ロイシン・イソロイシン 10.04
プロリン 6.89
アルギニン 6.88
トレオニン 6.25
アスパラギン酸 5.80
アラニン 5.40
バリン 4.76
チロシン 2.99
フェニルアラニン 2.64
リシン 2.11
トリプトファン 1.02
メチオニン 0.60
ヒスチジン 0.52

100モル中に含まれるアミノ酸のモル数(被服材料学、森、中島)

羊毛は寝具に使用されている繊維の中では最も吸湿性が高いが、これは主成分のケラチンが関係している。

ケラチンの構成アミノ酸の中にシスチンがみられる。シスチンは次式のような構造をしたアミノ酸で、ケラチン分子にシスチン結合と呼ばれる橋かけ結合を形勢する。

(図は省略)

このような橋かけ結合は羊毛製品がしわになり難い役割を果たしており、シスチン結合の還元剤で切断され、酸化剤で再生されることはシロセット加工(羊毛製品に折り目をつける)にも利用されている。

図8 羊毛の模型

4) 絹

絹織物は紀元前2000年前に中国で始められた。更にこの絹織物はいわゆるシルクロードを経て国外へ輸出され、日本へは3世紀ころに、アジア諸国、ヨーロッパなどには4~5世紀ころに技術が伝わったといわれている。日本では明治末~昭和15年ころの生産が多くて世界1位であった。

絹は天然繊維中最も長い繊維で蚕(鱗翅目カイコの幼虫)のまゆから作られる。蚕の体内には2本の絹糸腺があって各々の絹糸腺には後部絹糸腺と中部絹糸腺、前部絹糸腺がある。まず後部絹糸腺から分泌された蛋白質のフィブロインは中部絹糸腺に送られここで蛋白質のセリシンによって覆われ、次いで前部絹糸腺で2本の絹糸腺から出たフィブロインは周囲のセリシンによって接着して1本の繊維となって吐糸口から出されてまゆを作る。

蛋白質フイブロンを同じく蛋白質であるセリシンで接着させた構造で羊毛に次いで吸湿性がある。

成  分 モル%
グルタミン酸 0.93
セリン 11.91
グリシン 44.46
ロイシン 0.49
イソロイシン 0.54
プロリン 0.40
アルギニン 0.44
トレオニン 0.98
アスパラギン酸 1.38
アラニン 30.24
バリン 2,09
チロシン 4.88
フェニルアラニン 0.63
リシン 0.30
トリプトファン 0.20
ヒスチジン 0.15

100モル中に含まれる各アミノ酸のモル数(森、中島)

5) レーヨン

木材パルプやリンター(綿の実についている短い繊維)など原料としたセルローズ系の再生繊維でレーヨン、捲縮レーヨン、ポリノジック等がある。吸湿、吸水性がよく、ぬれると強度が低下する。

6) キュブラ

銅アンモン法によって作られた再生セルローズで生産量は少ない。吸湿性はよい。

7) アセテート

木材パルプ・綿実のリンターパルプを原料としたセルローズ繊維で、セルローズのOH基をアセチル基と置換したセルローズアセテートを繊維としたもの。絹様の風味があリ、吸湿性がある。

8) 合成繊維

沢山の合成繊維があるが、枕の側材としての使用は少ない。

①ポリエステル

エステル結合による合成高分子からの繊維はポリエステルと称される。現在広く利用されているのはポリエチレンテレフタレートからのものである。ポリエチレンテレフタレートは次式によって合成される。

ポリエチレンテレフタレートは融点がナイロン6より高いが(軟化点238~240℃,融点255~260℃),ナイロン同様溶融紡糸で繊維とされる。化学繊維の中ではヤング率は大きく絹や綿と同程度である。吸湿性、吸水性が少なく水分率は0.4~0.5%、ナイロン同様に丈夫な繊維である。

②ナイロン

アミド結合(-CONH-)を持つ高分子化合物をポリアミドといい、この中の糸状の合成ポリアミドをナイロンと呼ぶ。日本やヨーロッパではナイロン6がアメリカではナイロン66が主である。分子中にアミド基とカルボキシル基をもっているので合成繊維の中では親水性は多い方である。

ナイロンはヤング率は小さいが伸長率の弾性度が大きい。伸縮性の必要とする繊維製品に適している。比重1.14で軽く薬品、かびに強い。合成繊維中では吸湿のある方ではあるが、静電気を帯びやすい。

 ナイロン66は次式によって合成される。

 

 

繊維は溶融紡糸法で作られる。軟化点230~235℃、融点250~260℃である。

 ナイロン6は次式によって合成される。

軟化点180℃、融点215~220℃である

③アクリル繊維とアクリル系繊維

アクリロニトリル単位を主成分とした高分子からの繊維をアクリル繊維、アクリロニトリル単位が重量比で40~50%に副成分を加えたものをアクリル系繊維と呼んでいる。副成分には塩化ビニルや塩化ビリニデンなどが使われる。

アクリル繊維は羊毛に似た風合いがあるが吸湿性に乏しい。ナイロンと同程度に軽い(比重1.14~1.17)。

アクリル系繊維は塩化ビニルや塩化ビニデリンがあって難燃性がある。

④ポリプロピレン繊維

プロピレンを重合させて作られる。比重は0.91で軽い。

⑤ビニロン

ポリビニルアルコール(PVA)を熱水溶解して湿式紡糸をして、できた水溶性の繊維に熱処理とホルマリン処理(アセタール化)して耐水性のある繊維とする。合成繊維中では吸湿性が大である。


詰め物の種類と組成と特質

昔から枕の詰め物として利用されたものは多い。動植物性の多くは吸湿、通気(放熱、放湿)、弾性、防菌性などが考慮されて選ばれ、鉱物性のものには通気、保冷などを目的としたものが多いが、時代、地域、流行、好みなどもあってさまざまなものがある。これまで使われていた詰め物についても一考することは、新しい枕の開発にも役立つのではないかと思っている。

(1) 詰め物の種類

1)草 類

ハス(蓮):スイレン科、多年草で根茎のつながり部分や不用部分を細断して使用した。乾燥すると硬くなるが吸湿性がよく、小穴が多いので通気性(放熱性)もよい。使用の歴史は長い。果実は生薬名蓮実として強壮剤。

(原産地)インド

(分布) 全国各地の池沼水田で栽培され、根茎は蓮根と呼ばれ食用となる。

マコモ(真菰):イネ科、多年草、別名 コモ、ハナガツミ、チマキグサ、カツミグサ、フシシバの茎葉を使用、枕の材料として最も古い時代からのものである。全国各地に分布。

ガマ(蒲):ガマ科、多年草、別名 ミズクサ、ヒラガマ、ヤリンボ、カバの葉、茎を使用。葉は柔らかいので編んで枕の側を作ったり巻いて枕を作ったりする。茎葉とも詰め物としても使われた。吸湿性、通気性(放熱性)がよい。

(分布)

ガマ科の植物は世界の熱帯、温帯に広く分布しており、10種類ほどがある。この内日本にはガマ、コガマ、ヒメガマの3種が自生している。

ガマは北半球全体の温帯に分布しており、日本では本州、四国、北海道に多い。コガマは日本、沿海州、中国、フィリピンに分布、日本では各地に自生している。ヒメ

ガマは日本、ユーラシア大陸の温帯、地中海地方に分布している。

日本ではガマ、コガマ、ヒメガマとも同じような所に自生している。

(形態)

沼や池などの水辺や湿原に自生していて、時には大きな群生も見られる。 草丈は100~200?ほどになる。茎は円柱形で太く頂上に短くて細い雄穂がつき、その下の方に黄褐色のローソク形の太い雄花がつく。葉は広線形で色は帯白の緑色、表面は滑らかで葉肉は厚く幅1~3?、長さ100~150?ほどになる。

(利用)

穂わたは座ぶとんや枕の詰め物として利用されたことがある。葉は水洗後乾燥してガマ草枕や脚絆、敷物などの加工材料とした。

(薬用)

雄花の花粉は蒲黄(ボオウ)と呼ばれる生薬で、止血、消毒作用のほか、煎用して補血、発汗、咳止めの民間薬となっている。

イグサ(藺草):イグサ科、多年草、別名 ホグサ、トウシンソウの茎を使用。昔から今も利用されている草枕で吸湿性、通気性よく、夏季用の枕として愛用者も多い。

(分布)

世界の温帯及び寒帯に分布し、種類が多い。

日本の各地に自生している。改良された種類は畳表などの材料として水田、湿地帯などで栽培されている。

(形態)

群生で濃い緑色をしていて中実、茎は太さ1~2mmほどで細長い円筒形で節はなく、滑らかで光沢がある。普通の形をした葉はなく全部が葉心のない葉鞘となっている。夏に茎の上部に緑黄色の小花がつく。

(採取)

開花期の前後に地上部分から全草を刈り取り陰干しとする。

(利用)

畳表、ござ、枕側、うちわ、手さげなどの加工材料となる。また茎の皮を割くと白い髄がとれる。これはあんどんなどの灯心やローソクの芯としたり枕の柔らかい詰め物として使われる。

(薬用)

生薬名は灯心草で脚気、水腫の時の利尿剤としてまた催眠、解熱にもよいとしている。

ススキ(薄):イネ科、多年草、別名 オバナ、カヤ、オバナガヤの茎・葉を使用。全国各地の堤、土手、荒れ地などに群生。

ヨシ(葦、蘆、葭):イネ科、多年草、別名 アシ、キタヨシの茎・葉を使用。全国各地の水辺に群落、自生する。

イネ(稲):イネ科、多くは一年草の茎・葉を使用。吸湿・通気性がある。インデアン種とジャポニカ種がある。

(原産地)

中国、インドのベンガル地方といわれている。

(分布)

ほぼ日本全土、水田地帯

(形態)

茎高50~100cm、葉の長さ30cmほどで細長く互生、花序は30cmほどで細長く互生、花序は30cmほど。

薬草・香草類:菊花、ショウブ、ヨモギ、バラ、ラベンダー、カモミール、レモンバーム、ミント類、ジャスミン、ベルガモット、ローズマリー、ディルなど(香料、香草、生薬の項参照)

(2) 穀 類

ソバがら(蕎麦殻):ソバには三稜形の種実がなる。この種実の中から白色で澱粉質のソバ粉をとり食料とするが、このときに副産物として出る果皮(殻)がソバがらである。

ソバがらは枕の詰め物としては最も代表的なものであり、古代から現代に至るまで多量に使われている。詰め物としては最適である。現在は世界各国からの輸入ソバが多いので粒の大きさ、色、形などソバがらも多様である。

ソバがらは吸湿性排湿性がよく、更に吸湿によって殻の表面と裏面の細胞の大きさの違いから殻の湾曲が増大するので枕の中での空間が増え通気性が増加する。

現代は製粉技術の相違からほとんどが3枚がらとなっているが、残留する粉もあって虫害もあるが、石臼などで引き直して1枚がらとして精製することで虫害を防ぐことに成功した例も多い。

ソバ(タデ科 Polygonaceae ソバ属 Fagopyrun ソバ Fagopyrumesculentum 多くは一年草)

(原産地)

中国東北地区、シベリア中部、アムール川流域、バイカル湖付近といわれているが、諸説があって地域を特定することは難しい。世界ソバ研究会代表でもあった長友大氏は「アジア大陸の中心部で内陸山岳地帯」がソバの発祥地と見るのが一番穏当であろうとしている。

(原基植物)

宿根ソバ説や野生ソバ説などもあって明確ではない。

(発 生)

紀元前4000年~2000年に地球上に発生したものらしいとされている。

(種類と分布)

a.普通ソバ

日本への渡来:中国から朝鮮半島を経て渡来したものと想像されるが、渡来の時代についての明確な資料は見当らないが、約3000年前の縄文晩期の初期頃にはヒエ、シコクビエ、アワ、キビ、イネなどと共に渡来し、栽培されていたといわれている。

形 態: 茎丈30~60cm、葉は心臓形の三角形、夏から秋にかけて白またはピンク色の小さな花がつき、三稜形の種実がなる。種実は3稜が普通である(98%)が、まれに変異で4稜(2%)2稜(0.2~0.04%)5稜(0.02%)6稜(0.001%)があると報告がある。日本、中国、アジア諸国、東部インド、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカで栽培されている。日本では一般的な品種。

 

b.ダッタン種(Fagopyrum tataricume Gaertner 一年草、別名ニガソバ、ガソバ)

シベリア、中国(東北部、南部)、モンゴル、インド及び周辺国、韓国、北朝鮮、カナダ、アメリカ北部などで栽培されている。日本での栽培は少ない。苦いが収量は多い。種実は三稜形。

c.宿根ソバ

多年草、別名、野菜ソバ、シャクチリソバ地下に黄赤色で大きな根茎がある。草丈は1m以上になり、茎も半木化する。刈りとりすると新しい芽が出て葉は食用となる。種実は三稜形、生薬名「赤地利」(本草綱目)。

d.その他

数種類のものがあるがいずれも特定地域で栽培あるいは自生している品種で数量は少ない。それぞれの種実は特徴ある形をしている。

a) Fagopyrum rotundatum Gaertner

Kunawur 地方で栽培、種実は三稜形、面の基底部は丸みがあり、上部は竜骨形、しわが多く、面の中央に縦走条線がある。

b) Fagopyrum emarginatum MEISSN

東ヒマラヤ、中国西北部に自生するといわれている。種実は三稜形、面は卵様で平滑、頂点に截刻がある。

c) Fagopyrum eymosum MEISSN

温帯ヒマラヤ地方、種実は三稜形、頂点鋭角で卵形

d) Fagopyrum triangulare MEISSN

Nepalia,Kumaon,Sirmove, 中国に自生、種実は三稜形角端隆突、面は卵形

(ソバと名の付く別種のもの)

タデ科には30属 800種がある。その中でソバでないものでソバと名の付くもの、オヤマソバ、ソバカズラ、タニソバ(ソバタデ、アカヅラ)、ミヤマタニソバ、ツルソバ、トゲソバ、(ママコノシリヌグイ)、ミズソバ(タソバ、ウシノヒタイ)、オオミゾソバなどがある。また別な科の中ではソバグリ(ソバノキ 本名ブナノキ ブナ科、実に稜角があるのでこの名がある)、ソバノキ(本名アカモチ、バラ科)、ソバナ(キキョウ科)ソバウリ(本名キウリ、ウリ科)などがある。

もみがら(籾殻):イネ(稲)

もみがらは吸湿性(ソバがらより遅い)、通気性がよい。ソバがらと比べ、ぬめりが少なく硬いが、ソバがらと共に昔から使用され、数量的には昔は最大であったが現代では使用は少ない。ソバがらが今も使用されているのと対象的である。

アズキ(小豆):マメ科、一年草の種子、枕の詰め物として吸熱性があり、吸湿性、通気性もよく昔も今も使用されている。詰め物として最適である。

(原産地)インド

(分布) 北海道が多い。

(種類) 栽培品種で種類は多い。

(薬用) 生薬名は赤小豆、内用して利尿剤、外用では消炎剤の民間薬として使われている。

リョクズ(緑豆):マメ科 、一年草、別名 ヤエナリ、ブンドウの種子アズキと同様に使われている。中国南方産。

クロマメ(黒豆):マメ科、一年草の種子、別名マメ、オオマメ、大トウケツ豆の一種、生薬名豆檗。吸熱、吸湿、通気性がよい。

ヒエ(稗):イネ科、一年草の種子・殻、野生の変種にはイヌビクマビエがある。吸湿性よく昔は高級な枕の詰め物

アワ(粟):イネ科、一年草の種子

キビ(黍):イネ科、一年草の種子

ジュズダマ(数珠玉):イネ科、多年草、別名 スズコ、スズメダマ、スダマノキ、スズダマの種子、通気性、吸湿性がよい。

(原産地)中国

(分布) 本州各地の原野、水辺に自生

(生態) 茎高120~150㎝、葉は対生、葉身は細長く夏から秋にかけて葉腋から雌花、雄花、を別々に出す。秋には球形で白褐色のやや堅い実をつける。

(薬用) 実は生薬名川殻として利尿剤、健胃剤として煎用、古くからの民間薬。

自生している地方では枕の詰め物として昔から使用されているが枕に詰めるには量が多く必要とあって自生が少なくなったいまは使用は減少している。

コ―ヒ―豆:アカネ科、常緑低木の種子

(原産地)中央アフリカ

(分布) 熱帯各地で江戸時代に外国人により時々輸入されたが一般化したのは大正以降、平成における需要は多い。

その他の種実:ドングリ(ブナ科のカシ、クヌギ、ナラなどの果実)、クルミ(クルミ科)、ウメ(バラ科)の種など

3) 木 片

キリ(桐):ゴマノハグサ科、落葉高木、別名 キリノキ、ヒトハグワ、ハナギリ、木質柔らかく粗なので吸湿性がよい。

ヒノキ(檜):ヒノキ科、常緑高木、日本特産種、香り、防菌性

アスナロ :ヒノキ科、常緑高木、別名 アスヒ、ヒバ、シロビ、アスハノキ、ヒノキアスナロ、香り、防菌性

ホオ(朴):モクレン科、落葉高木、別名 ホホノキ、ホンノミ、ミユフベ、ホオカシワ、木質柔らかく粗なので吸湿性がよい。

スギ(杉):スギ科、常緑高木、日本特産〔木部の精油成分平均1%主成分は「セスキペン」「セスキテルペンアルコール」など〕

ケヤキ(欅):ニレ科、落葉高木

その他の木片および木炭(吸湿、吸臭性がよい)

4) 木 葉

茶 葉  :ツバキ科、常緑低木・原産地は東南アジア、高さは1mほどで葉は長楕円形で厚く表面平滑で光沢がある。香りがよい。

柳 葉  :ヤナギ科、落葉高木または低木、日本には90種類ほどがある。

油柑葉  :トウダイグサ科、別名集葉、余甘子葉、産地は中国の四川・広東・広西・貴州・雲南などで葉は夏・秋に採取される。薬効は皮膚湿疹、庁瘡によく殺菌作用がある。

ナンテン(南天):メギ科、常緑低木、原産地は中国、葉は羽状複葉九州沖縄に分布、観賞用として各地で栽培されている。難を転ずるとの語呂合わせから縁起ものとして使われていた。果実は生薬名南天燭

5) 竹   

:イネ科、常緑高木または低木で種類は多い。

チップ材・中空の細竹を1~2cmほどに切ったものなどが使われる。通気性がよく、吸排湿性、吸排熱性に優れている。洗濯も可能なので衛生面からもよい。

6) 動物性材料

被毛類:羊(ウシ科)、ラクダ(ラクダ科)、カシミヤ山羊(ウシ科)、山羊(ウシ科)、アルパカ(ラクダ科)、ヤク(ウシ科)、ウサギ、(ウサギ科)、牛(ウシ科)、馬(ウマ科)、犬(イヌ科)など

羽 根  : アヒル(カモ科)、ガチョウ(カモ目)、アホウドリ (アホウドリ科)、カモ類、七面鳥(シチメンチョウ科)、鶏(キジ科)小鳥類など

羽根(フェザー)は通気性よく放熱があり、弾性も適当でなじみ易い。

皮、毛皮、牙、角なども数は少ないが利用されている。

7) 土、石類

小石、砂、塩、碁石、粘土、陶器、珊瑚、貝殻、人工真珠、人工砂、人工石などいずれも涼冷感のある素材であり、夏向きの枕が多い。

8) 金 属

スプリング、砂鉄、鋳鉄、鉄線など涼冷感がある。

9) 繊維類

綿:アオイ科、アジア、中米、南米原産、一年草の種子の綿花

麻:クワ科、中央アジア原産、一年草の茎の繊維質

亜麻:アマ科、西アジア原産、一年草の茎の繊維質

パンヤ(カポック):パンヤ科、東アジアの熱帯に分布している常緑高木で、20~30mほどになる。葉は掌状で楕円形の小葉7~9枚からなっている。実は長さ12cmくらいで太さは 5cmほどになり5つに裂け、種子に綿毛があり、この綿毛が利用される。

枕の詰め物としては明治時代には既に使用されており、歴史は古い。軽く、弾性があり感触は柔らかいがヘタリ易い。長く使用すると粉状となるので追加して使用する。

絹:鱗翅目カイコガの幼虫の蚕のまゆから作られる繊維。

化学繊維類:ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ナイロン、ビニロン、アセテート、レーヨンなどかさ高性、弾性、防菌性などが利用されている。

10) 化学製品

ラバー(整形・チップ材)、ウレタン(整形・チップ材)、プラスチック(パイプ形・カプセル形・ビーズ形)、ビニール、およびこれらの加工品、各種の蓄冷剤など。プラスチックのパイプ型やこれに類似する中空型のものは通気性が良く、洗濯も可能である。ただし材質そのものは吸湿性に欠ける。

11) その他

水(水枕)、空気(空気枕)なども詰め物となる。

(2)詰め物の組成

1)ソバがら

①ソバがらの組成

表10 財団法人日本食品分析センター分析試験成績書より

分析試験項目 結果 検出限界 分析方法
水分 11.2%     常温加熱乾燥法
粗たんぱく質 3.4%   1 ケルダール法
粗脂肪 0.6%     ジエチルエーテル抽出法
粗繊維 45.6%     ろ過法
粗灰分 2.1%     直接灰化法
可溶無窒素物 37.1%   2  
リン 45.6mg/100g     バナドモリブデン酸吸光光度法
カルシウム 152.0mg/100g     過マンガン酸カリウム容量法
硝酸態窒素 1.4mg/100g     カドミウム還元・ジアゾ化法
尿素 検出せず 0.1%   ウレアゼ法
ADF 60.6%   3  
NDF 71,1%   3  

注1.窒素・たんぱく質換算係数:6.25

注2.計算式:計100-(水分+粗タンパク質+粗脂肪+粗繊維+粗灰分

注3. P.J.Van Soestらの方法[Proc,Nucr,Soc.,32,123(1973)]

②ソバがらの脂肪分

ソバがらの粗脂肪はそば粉の2倍ほどがある。これがソバがらがさらさらした感触をもつ要因の一つとなっている。

ソバ脂肪分の特性(長友 大)

緑黄色、無臭、室温で固化、比重0.9227、脂肪酸組成はオレイン酸(約55%)、リノール酸(約20%)、パルミチン酸(約13%)、その他の高級脂肪酸(約5%)、鹸化価189.50、屈折率1.4571、ヘーネル価95.14、酸価22.39、ライヘルトマイスル価1.05、ヨウ素価102.8、ボレンスケ価0.71、アセチル価13.53

2)もみがらとソバがらの組成の比較

       表11 古村清尚氏より

 

試料/成分 水分 灰分 珪酸 石灰 苦土 リン酸
もみがら% 12.0 16.22 15.27 0.07 0.17 0.19
ソバがら% 14.0 2.98 0.06 0.29 0.40 1.07

3)豆類、穀物類、葉などの組成

品名

可 食 部 100g 当 た り

 
エネルギー 水分 タンパク質 脂質 炭水化物 灰分 無 機 質  
糖類 繊維 カルシウム リン ナトリウム カリウム  
Kcal Kj g mg  
小豆 339 1.418 15.5 20.3 2.2 54.5 4.3 3.3            
緑豆                          
大豆                          
                           
                           
                           
                           
                           
                           

 

4)ラクダ毛と羊毛

①組織学的構造

ラクダ毛の形態学的構造はだいたい羊と似ているが、鱗片層、皮質層、髄質総の組織的構成の各々については異なるものがある。

イ)鱗片層

鱗片層は毛繊維の表層にあって、扁平、不規則な角質細胞から出来ていて、羊毛の鱗片とは異なるものがある。ラクダ毛の鱗片は割合少なく1mmの長さの名kに約40~90個平均で60±32個である。

鱗片は皮質層にぴったりくっついていて不完全に覆われている。縦向きの方は羊毛より少なく、毛繊維下部の鱗片の回りは滑らかだが、上部からだんだん歯の形になって、うぶ毛層の上部は絡み合うようになるので、ラクダ毛は弾力性が少なく粘着しにくい。

ロ)皮質層

皮質層は毛繊維の主体であるが、ラクダ毛の皮質層細胞は羊毛よりも細くて長い。細胞の中にある色素粒によって毛の色が決まる。

ハ)髄質層

髄質層ができるのは毛繊維の形成上で十分角質化されていなくて硫黄分が少ないからである。ラクダ毛の全繊維には量的には差があるが、ほとんど髄質が含まれている。髄質細胞の間に空気があって熱伝導が悪いので、熱の保存性は羊毛より良い。

②ラクダ毛繊維の種別

表14 成年ラクダ毛の類別比率(%)

性別/種類 うぶ毛 半粗毛 粗毛
78.28 17.00 4.60
87.66 3.04 4.01

 

イ)うぶ毛

直径30ミクロン以下、範囲10.21~26.0(平均17.22±1.65ミクロン)である。

性別ではオスのラクダ毛のうぶ毛は少し粗い。雌は細い。若齢のラクダは老齢のラクダより細く均一である。

ラクダ毛のうぶ毛は80%ほど上段が細長い髄、中間は点状髄、下段は無髄で上が粗く、下が細い構造である。

体の部分では体躯部分は粗く肩と頸はやや細く尻部分は細い。

ロ)半粗毛

直径30.1~50ミクロン(平均38.36ミクロン)、髄の構造は基本的にはうぶ毛と同じであるが少し粗い。

ハ)粗い毛

直径50.1ミクロン以上、範囲55~85.9ミクロン(平均66.75ミクロン)

5)羽毛、羊毛、山羊毛のアミノ酸の組成

東京工業試験所報告第66巻第3号(1971年)の報告によると、羽毛の羽柄部を切除した残りの羽軸、羽枝部の全窒素、全イオウ、アミノ酸組成について羊毛、山羊毛と比較した結果によると、羊毛と山羊毛のアミノ酸組成は似ているが羽毛は羊毛、山羊毛と比べて、セリン、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリンが多く、リジン、ヒスチジン、アルギニン、グルタミン酸、シスチン及び全イオウが少ない。一般的に無極性アミノ酸、イミノ酸が多く、塩基性アミノ酸や酸性アミノ酸が少ない。特に塩基性アミノ酸が少ないのが特長のようである。


●構造材について

(1) 草 類 :主に草の茎を編んで側材としたもの、及び、莚状にしたものを巻いて適当な太さ にしたものなどがある。現代ではイグサ以外に見ることは少ない。

材 料 :イグサ、ガマ、カヤ、その他の草類

(2) 木 :木枕(角形、丸太形、半丸太形、臼形、つづみ形、長木、枕、豆形、撥形、安土形、など)箱枕(角形、多角形、安土形、坂枕、入子枕、香枕など)組木枕(木と木、木と竹、木と籐などの組木)

材 料 :キリ(桐)、ツゲ(黄楊)、ケヤキ(欅)、スギ(杉)、ホオ(朴)、ヒノキ(檜)、クワ(桑)、ヒバ(ヒノキアスナロ)

(3) 竹 :竹枕、網目枕、組木枕など夏期用が多い。

イネ科タケ族で各地に自生、栽培され種類も多い。

カンチク  (寒 竹)高さ2~3m、稈の径1~1.5cm、節間7~14cm

ナリヒラダケ(業平竹)高さ4~10m、径4cmほど本州中部より南、四国、九州に自生

モウソウチク(孟宗竹)原産地中国、高さ10mほど、径10~20cm

クロチク  (黒 竹)原産地中国、高さ3~8m、径2~7cm

メダケ     (女 竹)高さ1~5m、径1~3cmなどがある。

(4) 籐 :網目枕など夏季用が多い

籐には200種以上の種類がある。主産地はインドネシア、マレーシア、フィリピンなど。原料の籐材料は棒状の太民、中民、幼民と丸籐、皮籐に分けられる。

太民( ターミン ) :径28mm以上の太さのもの

中民(チュウミン :径20~28mmの太さのもの

幼民( ヤンミン ) :径20mm未満の太さのもの

丸籐:表皮の硬い艶のある艶籐と、皮の艶のない芯籐の総称で、径4~12?ほどのもの

皮籐:丸籐を裂いて皮の部分を一定の幅と厚さにとったものと、皮の中央部を細く削りとった背とりがある。これを染めたのが背取染で製品に美しい模様ができる。籐枕は皮籐が多く使われている。

(5) 動物性材料 :皮、毛皮、骨、牙、鯨のひげ、ベッコウなど

(6) 土・石類  :石枕、陶枕、陶香枕

(7) 金 属 類   :鉄、アルミニウム

(8) 化学製品  :プラスチック、ラバー、ウレタンなど

(9) そ の 他


●香り物質の作用

香り物質から揮発した香りの粒子が鼻腔の上甲介骨の奥の嗅裂に入り、そこの臭覚神経を刺激して電気的インパレス(信号)を起こして脳中枢に感覚を作らせる。この感覚が臭覚となる。

(1) 臭覚の特徴

臭覚の特徴として次のことがあげられる。

○同じ濃度の香りでも最初に嗅いだ時の香りが一番強く感じるが、同じ香りを長い時間嗅いでいると臭覚はその香りに対して鈍感となる。

○同じ香りでも濃度によって異なる感じを受けることがある。

悪臭と感じた香りが、香り物質を稀薄にすることによって快い香りとなることなどである。

○同じ香りでも個人差があって、人によって反対の反応を示すことがある。

(2) 催眠と覚醒

香りが睡眠環境の向上に利用されることも多く効果についての報告も多い。

1)島田和則ほかの研究報告(1987年日本公衆衛生学会)では疲労度に及ぼす影響

●実験方法

被験者・・・合宿研修中の女性80名を4グループに分けた。

第1グループ  夜に入眠促進の香り    22名

         朝に覚醒の香り

第2グループ  夜に入眠促進の香り    18名

第3グループ  朝に覚醒の香り      17名

第4グループ  香りなし         23名

供試料・・・入眠促進にラベンダー、カモミールを使用

      覚醒にペパーミント、バジルを使用

期 間・・・4日間

測 定・・・フリッカー値及び自覚症状による

成 績・・・香りを使用した第1~第3グループは、使用しない第4グループに比べフリッカー値の増加、疲労の自覚症状の訴えの減少が認められ、第1、第2グループでは特に大きい。 

2) 鳥井鎮夫の報文(フレグランス・ジャーナル No.86. 1987 )

前頭葉は注意、期待、動機づけなどの精神活動の場で、心の動きに対して前頭葉の脳波は敏感なので、香りの興奮効果と鎮静効果について前頭葉の脳波CNV(期待波)を測定している。

ジャスミンを嗅いだ時はCNVが大きくなる。すなわち期待の度合いが強くなる。これは前頭葉の脳細胞の働きの高まりであり、ラベンダーの場合はCNVが抑えられる。前頭葉の脳細胞の働きが弱められていることであるとしている。

各種の精油について嗅いだ時のCNVの大きさを精油なしの場合を100とし、100以下が鎮静、100以上を興奮作用として図示している。興奮効果のあるものはバジル、クローブ、ネロリ、ペパーミント、ローズ、イラン・イランであり、鎮静効果はカモミール、レモン、サンダルウッドとなっている。

しかし精油によっては変化の方向が濃度や個体差によって必ずしも一定しないこともあるとしてゲラニウムを試料としての試験では至適濃度で興奮状態を示し、それ以外の濃度では逆の効果を示し、至適濃度には個体差があるようであるとしている。

(3) 殺菌性、抗菌性

古代エジプトの時代ではミイラの保存のために樹脂類や香料を入れて脱水前に死体が腐敗することを防いだといわれている。

香りの殺菌性や抗菌性については市販の殺菌剤や抗菌剤と比べると微弱ではあるが、合成剤と比べて天然の香りは安全性の点からも注目されてもよいものである。

黄色ブドウ状球菌、大腸菌、キャンディダ属酵母、ジフテリア菌などに対する測定がある。

江戸時代以前からあった香枕が、頭髪に香りをたき込めるために使用されてきたが、香りを楽しみながら頭髪が不潔になることへの防止にも役立っていたものと思われる。

(4) 防虫性

1)木材の香りの防虫性

各種木材のニオイに対するダニの回避行動について安藤善朗の実験報告(日本公衛誌40巻7号平成5年)がある。

○実験方法

供試木材製材加工したヒノキ、マツ(アカマツ)、スギ、ラワン(メンチラ)、スプルス(シトカトウヒ)の木屑ダニケナガコナダニ、コナヒョウダニ、ヤケヒョウダニ

実験・白色不透明のプラスチック製の観察台(タテ20?、ヨコ40?)の中央部に線を引き、右側の中心部に木屑0.02gを置き、中央部の線上にダニ25匹を放置して右側と左側領域おけるダニの経時的な分布状態を調べた。

雌雄別に実施温度19~23℃、室内湿度26~60%、観察台上は加湿器を使用して湿度約80%とする。

成績・?木材のニオイ種類別のダニ忌避作用はヒノキ、マツ、スギは強く、ラワン、スプルスは弱い。

?ヒョウダニ類はケナガコナダニよりも木材のニオイに対して忌避行動が強い。

?雌雄間では有意な差は認められない。

表28 各種木材に対するダニの忌避行動経時的観察報告(安藤善朗)

これらの相違は各々の木材に含有する成分の相違による。

 

■供試木材の含有成分

ヒノキ β-ピネン、カンファー、カジネン、カジノール、

ヒノキオールなど

ス ギ β-オイデスモール、カジネン、α-ピネン、シペテン、スギオールなど

マツ(アカマツ) α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、カンファー、

カジネンなど

ラワン シネオール、α,βーツョン、シトロラール、

カジネンなど

スプルス

(シトカトウヒ) アセトバニリン、バニリン、バニリルアルコール、

カラジェン、オクチルフタレートなど

カンファー、シネオールは防虫剤として利用されている。


●枕の大きさについて

年齢、体形、寝姿、習慣、睡眠中の体の動きなどの個人差や枕の形や中材の種類、敷きフトンやマットレスの硬軟、寝具の様式などさまざまな要素が影響する。このことは枕の高さについては特にかかわりが多い。ここではこれまで多くあった坊主枕(くくり枕、丸枕)、現在多く使われている平枕(洋枕)について記述する。

昭和32年~35年ころの長野県での調査(太田久枝)によると坊主枕(くくり枕)は児童で76.8%、成人では都市で88.8%、農村で75%であり、坊主枕が主流であった。現在は寝具の洋風化や体型の変化もあってほとんどが平枕となった。また枕の寸法についても大型化の傾向が強い。

 

(1) 長さ

特別な形でなく坊主枕(くくり枕、丸枕)や平枕(洋枕)の場合は肩幅あれば寝られるが、これに10cm以上を加えた長さが使いよい。50~70cmあれば頭が枕から外れることは一般的にはない。坊主枕について前記の太田久枝の昭和32年~35年の長野県の調査では、成人で平均33.4cm、児玉松代の昭和37年の広島県の調査では、成人で40±8.9cmとある(下表)。

○年齢別にみた枕の大きさ(大学生とその家族の調査)

表29 児玉松代の調査 (昭和37年)

カッコ内の幅、長さは筆者記入。

現在は丸枕、平枕とも上記の長さよりはやや長い寸法のものが多い(白崎)。

(2) 幅

坊主枕では20cm以上、平枕の場合は肩先をふさぐような姿勢となるので、坊主枕より10cmほど広い方がよい。坊主枕の場合は詰め物の充填率によって幅を調整する(白崎)。

(3) 高さ

枕の高さは、枕がなくても寝られる人、高い枕が好きだという人、慣れた枕でなければ眠れない人など、体形、寝姿、習慣などによる個人差があり、また敷きフトンやマットレスの硬軟なども大きく影響するので、高さを決めるには多くの問題点を解決しなければならない。

1)高さの実態調査

○使用中の枕の高さについて最初に調査したのは太田久枝で、長野県の小学生(男女)5・6年生2,040名(昭和32年調査)と、成人(男女)では農村(男女)100名、市内(男女)100名(昭和34年調査)についてアンケート調査した報告によると

1) 表30  小学生の使用中の枕の高さ(太田久枝)

2) 表31  成人の使用中の枕の高さ(太田久枝)

成人の枕では農村都市とも6~15cmの中にあるが農村のほうがやや高い傾向にある。都市では8cmと10cmが、農村の方は10cm、11cmが多い。

 太田久枝の前述の調査のように坊主枕が多い時代であり、高さについても現在よりやや高めのものが使用されていたようである(白崎)。

○ 年齢別にみた枕の高さ

表32 対象:広島市内外の乳幼児、小学生とその家族、中高生(児玉松代)

年齢別の高さには相違があるが、使用中の高さと見かけの高さとの比では年齢ごとの差は少なくすべて70.4~71.7%の範囲にある。

2)官能検査による枕の高さ

・宇山 久の報告(1958年)

○実験方法

被 験者  健康な男女各50名宛計100名、年齢17才~53才。

実験用枕 1cmごとに高さが調節できるラシャ張り木製枕を考案し使用した。

実験    被験者の左右外耳孔を結ぶ線を枕の中心に引いた線に一致させる。

      各人が快適と感じた枕の高さを調べた。

成績    快適は大部分は6~10cmの間であり、8cmがもっとも多い。

 

表33 快適な高さ(cm)(宇山 久)

表34 許容範囲(cm)(宇山 久)

快適な高さは8cm(37%)、7cm(17%)、10cm(15%)、6cm(12%)、9cm(11%)、11cm(4%)、5cm(3%)、13cm(1%)で大部分は6~10cmの範囲であり8cmが一番多い。

許容範囲は2cm(53%)、1cm(29%)、3cm(8%)、0cm(7%)、4cm(3%)2cm以下が大部分を占めている。

・峯崎フミコらの報告

峯崎フミコらは1cmのベニヤ板を重ねて枕の高さを変えて、女子短期大学生(20才前後)40名について測定し報告をしている(1969年)。

これによると仰臥位ではちょうどよいとした高さの平均値は5±1cmであり、横臥位では6.8±0.9cmがちょうどよいとした高さの平均値である。

前記宇山と差があるのは、宇山の被験者は年齢層は17~53才と年齢層が厚く、峯崎らの被験者は20才前後と若い年齢層であったこととも思われる(白崎)。

3)筋電図からみた枕の高さ

・峯崎フミコの報告(1969)では、被験者の23~50才までの女子5名に対して枕の高さ0~10cmまで変え測定して、頚や肩の筋肉が一番リラックスしている状態は仰臥位で6cm、横臥位で8~10cmであったとしている。

峯崎フミコは前記の官能検査・筋電図・X線撮影(後述)による測定から見て、日本人女子の標準体型では仰臥位で5cm前後、横臥位で7cm前後が枕の適当高としている。

・児玉松代の報告児玉松代は枕の高さを、なし、3、6、9、11cmに変えて実験をした報告をしている(1976年)。

これによると6cmがI以外の各被験者とも放電量が最も少なくなっている。個人差があるが緊張の少ない高さとしている。

 

表35 枕の高さ別筋電図所見〔10秒間の放電数(個)〕(児玉松代)

・太田久枝の報告(1987年)

枕の高さが適当であれば頭を左右に動かした時でも筋活動量は少ないとして、被験者2名(男性50才代)による実験結果を報告している。

図17 ちょうどよい枕高に対しての筋電図の比較(太田久枝)4) 脳波から見た枕の高さ

児玉松代の報告(1976年)によると、なし、3、6、9、11cmと枕の高さによる影響をみると、6cmの時が最も頚部の安定がよいのが多いとしている。

 

表36 枕の高さ別脳波所見〔10秒間平均周波数(・)〕(児玉松代)

脳波は精神状態が安定していて外部からの刺激のない状態ではα波(8-13・)が現われるが、外部からの刺激によって精神状態が緊張すると高い周波数のβ波(13~30・)が出現する。適当な高さの枕を使用した場合には精神の安定が得られ不適当な高さの枕を使用した場合には刺 激によって精神状態が緊張するので、測定した脳波の単位時間内の平均周波数を見たり、周波数の高い部分、低い部分などの分析をすることによって精神の安定度を知ることができる(白崎)。

5)枕の高さと血圧、心拍数、呼吸数、心電図について

枕の高さが循環器や呼吸器の働きに何らかの影響を与えることは想像されるが、これらについての研究報告がある。

・宇山 久の報告(1958年)

○試験方法

被験者は健康な成年女子5名で、各人が快適と感ずる枕で30分間安静後、血圧、呼吸数、脈拍数を測定、次いで15cmの高い枕を使用して直後から3、5、7、10分と血圧、呼吸数、脈拍数、心電図を測定、更に枕を除いた無枕で同様な項目について測定、最後に快適な枕に戻して前回の各項目について測定している。

○試験成績

イ) 血圧、脈拍数、呼吸数の変化

表37 血圧、脈拍数、呼吸数の変化(宇山 久)

5例平均すると、枕を高く(15cm)すると血圧は最高、最低ともにやや上昇、脈拍数はやや増加傾向となるが、呼吸数に変化はない。枕を除いた場合は最高血圧は変わらないが、最低血圧は一過性に低下し、やがて元に戻る。他の項目では大きな変化はない。

即ち枕を高くした場合、頚部での強い屈曲が交感神経、迷走神経、頚動脈洞に作用して、交感神経性トーヌス優位となり、脈拍数の増加、血圧の上昇を起こし、枕を除くと頚部の屈曲がなくなり、血圧、脈拍数はもとにもどったとしている。

図18 血圧・脈拍数・呼吸数の変化(5例平均)(宇山久)ロ)心電図では各5例の平均値は各例すべてに異常心電図は見られなかった。枕の高さの変化によっての顕著な変化は見られなかったが、高い枕の場合と枕を除いた場合との比較では、主として胸部誘導では枕を高くした場合にはRは高いがTは高くなく、枕を除いた場合はRは低いがTは高くなる傾向が見られたとしている。

表38 心電図の変化(5例平均)(宇山久)

単位:PQ,QT,QRS,R-R,P巾はSec. その他はmm.

 

宇山は交感神経の緊張はTを低くし、副交感神経の緊張はTを高くするという研究者の報告を紹介し、睡眠時に副交感神経の亢進、交感神経の減退があることから、あまり高い枕は睡眠には不都合であるとしている。

・峯崎フミコらの報告(1972年)

○試験方法

Bのイ、ロの方法をとったのは被験者が就床後の脈拍、血圧の時間的変化が認められているので、前後の平均値によって時間的変化による誤差をなくするとしている。

○結果

Aの試験では枕の高さの相違が脈拍、血圧に如何なる影響を与えるかについては両被験者ともバラつきが多くはっきりした傾向をつかむことができなかったとしている。

Bの試験では被験者の個人差はあるが、高い枕の場合に脈拍、血圧ともに高い傾向が見られたとしている。

また今回のように動脈系のみを見た場合は、実験によって顕著な相違は見出し難いのは、貯溜血液は静脈系75%に対して動脈系25%であること、寝た場合は基礎代謝量が減り、心臓の負担が減るので、動脈の働きがあまり問題でない。静脈は静水力学的影響を受けやすいなどの理由であり、また被験者の順応性も考えられる。今後は静水力学的な考えから静脈圧の測定をし静脈系との関係を見たいとしている。

6)枕の高さと頚椎骨のX線所見

枕の高さが頚椎骨の位置の変化に影響のあることは容易に想像されることである。これらのついての研究報告がある。

・峯崎フミコらの報告(1968年)

被験者(50才女子)での観察では、枕の至適な高さは仰臥時で6.0cm、横臥では8.0cmであるとしている。

仰臥位での頚椎のX線写真では枕なしでは第2頚椎骨と第3頚椎骨の棘突起が開いており、至適高(6.0cm)では各々の頚椎骨は平均した自然の開きをしている。高過ぎる枕でも頚椎骨の第2と第3の間が開いてくる。横臥位では枕なしでは頚椎骨の第6と第7あたりと第1胸椎に湾曲があり、8cm~10cmでは割に自然の状態である。このように頚椎や胸かく部での不自然な状態では椎骨を貫通する血管や神経を圧迫する結果となり、不適当な枕の高さによる寝心地の悪さを理解する手がかりとなるとしている。

・太田久枝の報告(1987年)

被験者(63才、42才、36才、20才の女性4名)の枕の高さを変えながら頚椎の全長を直立時と横臥時を比較観察をしている。寝る姿勢では立位の時よりも頚椎の全長は短くなる。この縮み率は至適の枕の高さの時は個人差はあるものの最も少ないとしている。太田が他の1名の女子の被験者での実験では高枕で逆に若干伸びたということで個人差のあることが報告されている。

表39 枕の高さと頚椎の縮み率(女子)(太田久枝)

太田はまた頚椎のわん曲(頚椎弧)の変化についても観察し報告している。

直立位では頚椎は前方にゆるやかにわん曲していて椎体間の間隙はどの被験者もほぼ同様の状態であるが寝る姿勢では枕の高さによってこのわん曲の状態が変化をする。

枕なしの時では頚椎全体がほぼ直線を示し、頚椎間はやや詰まった感じとなる。低い枕の時は頚椎はやや後湾して、わん曲の強い部分は個人差があるが、胸椎側の6、7頚椎骨の間の部分が目立ち、高齢者の場合では更に5、6頚椎骨の間の部分にも認められた。至適の高さでは後湾の度合いは更に進み弱いS字状が見られ高枕の場合は頚椎が伸びる傾向にある。頚椎間の開きは若年層以外の場合脊椎側で大きくなっている。

・・での所見で至適な高さの枕の場合では頚椎の形状は全体がなだらかな自然な湾曲を示している。

7)MRI(磁気共鳴診断装置)による所見

X線の場合は骨のようにX線を透過しないものが影として写し出されることに対して、MRIでは神経、筋肉、軟骨など軟部組織も写し出すことができる。これは強力な磁場の中に水素原子をおくとその中の陽子が磁気に共鳴して磁力に強弱ができることの原理に基いて開発された装置で生体内にいろいろな形で存在している水素に磁力線を照射してその分布状態を図形化することによっていろいろな臓器や組織の状態を知ることができる。

よりよい枕作りをするためにもこれから期待されるものである。

・佐藤公治の研究報告

○実験方法

被 験 者 健常者9名(24~49才、平均33.4才、男7名、女2名)

供 試 枕 枕なし、高い枕(ポリエステル入、非加重時の高さ215┝)

      低い枕(羽毛入、非加重時の高さ175┝)、試作枕A・B

     (ピーズ、ポリエステル、羽毛の組合せ枕)

M R I SIMENS社製、MAGNETOM 1.0T

測定部位 第1頚椎(以下C1)~C7の頚椎前湾角、第1胸椎(以下T1)~T9の胸椎後湾角および後頭結節(以下EOP)C3、C5、C7、T3のMRI台底面からの距離、ならびに頚椎部で一番動きの多いC5高位における脊柱管内の脊髄の位置。

○成 績

脊椎前湾角は枕なしと比べると高い枕は前湾が消失し、胸椎後湾角は高い枕ほど増強する。EOP、C3、C5、C7、T3の距離は高い枕ほど大きい傾向で変化の程度は部位によってまちまちである。また性別、年齢よる差や個人差の寄与率高く認められた。

頚椎の脊柱管内で脊髄が中央に位置しているかどうかについては、脊柱管が広い健常者ではどの枕でも問題ないが、頚椎症、頚椎椎間板ヘルニアなど頚椎間狭窄のある場合はあまり高い枕

では頚椎は後湾となり、更に椎間板や骨棘が突出していると脊髄が圧迫され、枕なしでは頚椎の前湾が増強されて、椎間関節が狭くなって神経根を圧迫するので、このような疾患のある場合は頚髄のリラックスした位置の許容範囲が狭いので至適枕の選択が必要である。

・沖野光彦の研究報告

枕と睡眠 第8回睡眠環境シンポジウム報告、平成4年

枕と睡眠中の頚椎症の発現に関する研究 睡眠と環境、第1巻第1号、平成5年

臨床医として工場従業員160名および外来患者についての調査結果について次のように報告している。

#014:普通枕  #023:高枕(前屈)  #040:首下枕(後枕)

57才男性、MRI上、C5/6で前方から椎間板ヘルニア、C5/6とC6/7との2か所で後方から黄色靱帯肥厚による脊椎管圧迫を検出(#014、#040)。高枕で狭窄がほとんど消失(#023)していて垂直牽引と同じ効果がでているが、頂部筋肉群は異常に緊張

 

所見

頚肩腕症候群は中高年では女性は更年期障害、男性では五十肩が多い。

頚椎椎間狭窄は加齢現象で椎間板ヘルニアと黄靱帯肥厚による。

中高年者は第4/5または第5/6頚椎間での狭窄が顕著である。

狭窄部位の数は加齢とともに増加して分節状狭窄像を呈している。

進行度は職業、スポーツ、事故、外傷による頚椎への負荷が影響する。

考察

高い枕は頚椎症の発症を惹起する。

突背している老人では頚部脊椎柱をありのままの固定目的(整形外科)では個々に枕の高さを決める。

硬めのマットレスの上では60才前後以上の年代では側臥位で就寝の時、下方の上肢がしびれる頻度が高い。

頚椎への負荷は枕の高さとマットレスの硬さ厚さは相対的に関連する。

枕の高さが頚椎位置で8cm後頭部位で6cm、枕と顔の角度5度がよいとする他の報告についてはさらにMRIによる形態学的な再検討の余地があると思われる。

老化による身体上の制約から見た寝具の開発が必要である。

8)加藤勝也の枕の高さの決め方

睡眠時には頚椎を自然の状態に置くためには、頚椎の曲がり(頚椎弧と名付けている)の深さを測り、枕の高さを決めるとしている。

年齢別、性別にみた頚椎弧の深さについて次のように記述している。

(なぜ、人は枕をするのか、加藤勝也 立風書房 1995年)

女性(被験者 405名)は年齢に関係なくほとんどが頚椎弧は2.5~4.0cmであり、男性(被験者 131名)も年齢に関係なく3~5cmとなった。

また男性では年齢に関係なく5.5cm 以上の時、女性でも年齢に関係なく4. 5cm以上の時には猫背タイプであるとしている。この猫背タイプの人は被験者の男性で16%、女性では7%で、男性の場合若い層に多く、また高齢者では男女とも7cmと脊椎の湾曲が固定化して猫背が多くあったとしている。

表40 年齢と頚椎弧の深さ(加藤勝也)

男性(131名)

女性(405名)

9) 頚椎の正常可動域について

頚椎はその大きさの割には重い頭部を支えているので、頭頚部の安定のために果たす頚部諸組織の役目は大きい。

・骨格

頚椎は7個の骨からなっており、ゆるやかな前湾状となっている。

前湾の程度は骨の傾きによるもので、これが垂直に近い程湾曲少なくなる。正常な人でも前湾消失が7%、反対に後湾消失が2%あるとの報告(Rochtmanら)や顎を引くだけで前湾消失の報告(Finemanら)もあるので湾曲度の変化を過大に評価することはできない。

一般に頚椎の正中位は前湾が正常であるが、前湾が固定するのは40代に入ってからであり、若年層では正常でも前湾消失や後湾位をとることもある(森)。枕に関するアンケート調査(白崎)で40代以下の若年層において「どんな枕でも寝られる」との回答が66%であり、50代では44%、60代では41%となっている。これらは若年層ほど椎間板の弾性が大きく対応も柔軟なことによると思考される。

頚椎骨の刺突起は第2と第7が大きい、特に第7頚椎骨は頚を前屈すると突出するので分かり易い。それでこの部は枕の高さを図る時の一応の目安ともなっている。

第3から第5までの刺突起は後屈時に刺突起が互いにぶつかることを減じて動く範囲を広げると共に筋の付着面積を増加する効果を果たしている。

1. 後頭 2. 蝶形骨 3. 後頭骨底部 4. 大(後頭)孔

5. 第一頚椎(環椎):椎体と棘突起がなくゆびわ状、後頭骨の後頭顆にゆりかごように作用するのでアトラス(環椎、アトラス神が天を支えている)の名がある。

6. 第二頚椎(軸椎):頭の回転がこの軸椎を中心ににして回ることからこの名がある。

7. 第三頚椎 8. 第四頚椎 9. 第五頚椎 10. 第六頚椎 11. 第七頚椎(隆椎)

図22

1. 顎二腹筋の後腹 2. 胸鎖乳突筋 3. 僧帽筋 4. 鎖骨 5. 斜角筋隙 6. 胸鎖乳突筋の鎖骨起始

7. 胸骨柄

図23

成人の頚椎全体の動きは前屈60°、後屈50°である。

頚部の筋が最も緊張が少なくリラックスした状態であるための各頚椎骨の動きの屈曲度範囲は(C:頚椎、T:胸椎、カッコ内は屈曲度)C2-3(5~7°)、C3-4(8~12°)、C4-5(7~11°)、C5-6(10~17°)、C6-7(8~16°)、C7-T1(7~11°)である。平均値ではC5-6(13.5°)、C6-7(12°)、C3-4(10°)、C4-5(9°)、C2-3(6°)の順に動きの角度が大きい。頚部がリラックスした状態にあるためには各部がこの屈曲範囲内のあることが望ましい。

頚椎骨の中でC1は頭部に、C7は胸椎の中に入る構造なので、C2~C6特に屈曲範囲の大きいC5・C6の屈曲は重視されるべきと思考される。回施は左右70°づつあるが、その内の約45°ほどはC1-2の働きである。

・筋肉

筋肉では屈筋群と伸筋群によって屈曲、伸展、側屈、回施運動とともに呼吸筋としての作用をもっている。胸鎖乳突筋、僧帽筋などは走行が分かり易いので、症状を知る上でのよい目安となる。

枕が低すぎると僧帽筋は収縮し、胸鎖乳突筋は伸びるし、高過ぎると僧帽筋は伸び、胸鎖乳突筋は収縮する。

・背臥位での舌骨・甲状軟骨、第1輪状軟骨の位置と頚椎

舌骨はC3、甲状軟骨上縁はC4-5、第1輪状軟骨はC6の位置の当る。

頚部には気管・動脈・静脈・神経など狭いところに集中しているので枕の高さが適当でないと息苦しさや、いびき、頚や肩の凝りの原因ともなり安眠の妨げとなる。

高さについては他に体型、寝姿、習慣、敷の弾性などさまざまな要因が影響するので個人差が大きいことを考慮すべきものと思われる。

10)枕の高さの調節

枕の高さには個人差があるので、自分で作った場合や注文製作品以外で市販の枕を使う時には、自分に合うように高さを調節しなければならないことがある。

市販のものを買い求めて詰め物材の量を加減して調節することは、面倒なことであるが、高さの調節には以下の方法ですると容易となる。

高くするには

・枕の下か上にタオルなどを置いて高さを調節する。

・中袋があってファスナーのついた側布で二重になっている時は、上の側布のファスナーを開いて中に布などを挟んで高さを調節する。

低くすには

・詰め物を減少するか構造体を削るなど手数がかかる場合が多い。

・詰め物をした中袋にファスナーのある場合は詰め物の加減は容易となる。

・詰め物をした小袋が数個あってこれを加減することによって高さの調節をする。

・高さを調節する機能のついたギヤ式の枕。

などがあるが、体形や習慣による個人差が大きいことや敷フトン(マットレス)の弾性によって適合する高さに差ができるので平常使用中の敷によって使用感を確かめることである。

枕の使用は敷と一体として考えるべきである。

11)枕の変形性

陶器枕、木枕、竹枕、金属性の枕などのように形が定まったもの以外の軟らかい枕や詰め物をした枕は頭をのせるとその重みから枕は低くなる。この見かけの時(使用前の時)の高さに対して変形して低くなった状態をいう。枕の沈み率、沈み分、ともよばれている。

児玉松代の見かけの高さと使用中の高さについて年齢別に調査したものがある(1976年)(前記年齢別にみた枕の高さ参照)。これによると沈み分は27~30%である。しかし詰め物別に見ると種類による差が認められる。

表41 年齢別枕の見かけの高さと使用中の高さとその比(児玉松代)

   (調査対象:乳幼児、小学生とその家族、中高生)

表42 成人・子供(10~14才)充填物別にみた使用中の高さ(児玉松代)


●形と構造

古代から現在まで長年にわたっていろいろな枕が作られ使われてきた。これらは時代、地域、民族、風俗、習慣、職業、流行、趣味、その他さまざまな違いもあって、形や構造、材質や作り方なども多様で驚くほどたくさんの種類がある。

これらの中から代表的な枕について一部写真を入れて記述する。写真は特記のないものはいずれも白崎枕コレクションの中から選んだものである。寸法については特に記入しないものは無荷重の状態での最大部分を、くくり枕付きの場合は枕付きの状態の寸法とした。

なお種類も多く全部を記載できないので詳細については「枕の博物誌」(白崎繁仁北海道新聞社)を参考にしていただければ幸いである。

(1) 日常家にあって使用する枕

詰め物枕、箱枕、組木枕、網目枕、折たたみ枕、木枕、草枕、束枕、竹枕、陶枕、石枕、皮枕、毛皮の枕、牙骨を使用した枕、金属製の枕、化学製品の枕など種類が多い。

1) 詰め物枕

昔から現在も一番多く使用されている詰め物をした枕には坊主枕(丸枕、くくり枕)平枕(洋枕)、角枕、長枕、馬蹄形枕、扇形枕、ドーナツ枕、子供用の動物を型どった枕など種類が多い。昭和の中頃までは坊主枕が主流であったが現在では平枕が多い。他の形の詰め物枕は多くはない。

坊主枕は筒形の側布(材)の中に詰め物を入れて閉じたものであり、古代から使われていた形である。

平枕は側布(材)を長方形に縫ってこれに詰め物を入れたもので中央部がふくれるので断面は紡錘形となる。

平枕でも側面にマチ布(材)を入れて高さを平均にしたものもある。

角枕は坊主枕の側布の四すみを縫い合わせて角を作り角形とする。昔は芯木を入れて角形としたものもある。

長枕は二人寝用の枕で坊主枕、平枕がある。馬蹄形枕は幼児用に多い。扇状枕は寝返りの姿勢に合わせたもの。ドーナツ枕は中国では子供の耳の形がよくなるようにと古くから使用されていた。子供用の動物枕のほかに花や魚の形のものなどがある。その他、寝返りにあわせて高さが調節できるよう中央部を低くした坊主枕、二つ折や三つ折にしたもの、詰め物入の小袋を組合わせたもの、中材の増減しやすい構造のもの、丸巻きにして高さを調節できるものなど種類は多い。

写真1 丸枕(坊主枕) 昭和初期

長さ35.0cm 幅17.0cm 高さ11.0cm 写真2  平枕(洋枕)パンヤ入り 現代

長さ55.0cm 幅37.0cm 高さ14.0cm

写真3 二つ折りの枕 現代

長さ52.0cm 幅36.0cm 高さ11.0cm 写真4 マチの入った平枕 現代

長さ55.0cm 幅35.0cm 高さ5.0~10.0cm

2) 箱枕

昔はいろいろな箱枕が工夫され使われていたが、現在では秋田杉の箱枕や岩手県など桐材の多い地方での半丸形の枕など、地方の特産品として一部で作られている程度である。

角形(四角形)、多角形(六角形など)、安土形(矢場の標的を置く安土に似ているのでこの名がある)、半丸形などがある。底面が平らな平底形、丸みがあって左右にゆれる船底形などがあり、角形には底板のついたもの、物入れの引出しのついたものなど江戸~明治時代にはさまざまな形のものあった。

江戸時代には髷があったので男女とも使ったが、明治4年(1871年)の断髪令以降は男は坊主枕となったので日本髪の女子が使う程度となった。上部の頚の当るところにくくり小枕を付けたものが多い。

写真5 角形 平底型 江戸 横引出し   写真6 安土形 平底型 江戸~明治

長さ21.0cm 幅 7.2cm 高さ17.5cm  長さ28.5cm 幅11.0cm 高さ19.0cm

写真7  半丸形 昭和         写真8 安土形 船底型 江戸~明治

長さ28.0cm 幅16.0cm 高さ 7.5cm   長さ21.0cm 幅 9.5cm 高さ18.0cm

3) 組み木枕

木や竹などを組み木にして作られた枕で、木と木、木と竹、木と藤、木と皮、木と陶器など組み合わせはさまざまである。これも昔はよく使われた形式ではあるが、くくり小枕をつけたものが多い。現在は地方の特産品として作られている程度である。

写真9  キリ材製 現代        写真10 ヒバ材製 豆形 現代

長さ23.0cm 幅 9.0cm 高さ 8.0cm  長さ21.5cm 幅10.0cm 高さ10.2cm

                             (中央部)

写真11 ケヤキ材製 鼓形 江戸    写真12 木と竹 現代

径 12.0cm 高さ 11.8cm        長さ31.0cm 幅12.7cm 高さ 8.0cm

写真13 木と竹 大正         写真14 蒔絵入 江戸 

長さ26.0cm 幅11.5cm 高さ12.0cm  長さ23.5cm 幅17.5cm 高さ18.0cm

4) 網目枕

籐製品の枕が多く、昔から夏用の枕として愛用する人も多い。現在では輸入品が多い。丸形、角形、半丸形、楕円形など長短さまざまな形がある。他に竹、木、陶器、金属製や複数の材料を組合わせた網目枕もあるが数は少ない。

写真15 丸形 籐製 現代       写真16 半丸形 籐製 明治 

長さ23.0cm 幅13.0cm 高さ14.0cm   長さ24.0cm 幅13.0cm 高さ14.0cm

写真17 平形 籐製 現代       写真18 角形 籐製 昭和 

長さ34.5cm 幅15.4cm 高さ 6.0cm   長さ21.5cm 幅15.0cm 高さ10.0cm

写真19 籐と木 大正         写真20 金属・ビニール製 昭和

長さ25.5cm 幅11.0cm 高さ12.0cm   長さ29.8cm 幅11.2cm 高さ12.5cm

5) 木枕

古くから使われた材料であり、形も多い。丸形、半丸形、臼形、鼓形、角形、撥形(三味線の撥の形をした枕)、安土形、豆形、長形などがあったが、現在では地方の特産材料を使った特産品として作られている程度である。青森県のヒバ枕、岩手県の桐枕などがある。

外国ではさまざまな木枕を見ることができるし、形もいろいろなものがある。

写真21 丸形             写真22 半丸形 通気の穴がある 昭和

長さ20.0cm 幅11.0cm 高さ5.5cm   長さ24.0cm 幅10.0cm 高さ7.5cm

写真23 角形 江戸          写真24 安土形

長さ15.3cm 幅12.5cm 高さ12.5cm   長さ19.6cm 幅10.0cm 高さ10.0cm

写真25 撥形 江戸          写真26 鼓形 年代不詳

長さ18.7cm 幅11.7cm 高さ20.0cm   径11.7cm  高さ11.7cm

6) 陶枕

陶器の枕にも形の種類は多い。角形、丸形、豆形、半丸形、船形、人や動 物、植物を形としたものなどがある。夏用として現在も使われている。

写真27 角形 昭和初期        写真28 豆形 昭和初期

長さ14.2cm 幅6.3cm 高さ12.9cm   長さ20.0cm 幅10.2cm 高さ7.4cm

                                (中央部)

写真29 童子形 現代         写真30 動物形  年代不詳(中国)

長さ28.5cm 幅13.5cm 高さ9.4cm   長さ34.7cm 幅14.0cm 高さ15.0cm

           (中央部)              (中央部)

7) 趣味の枕

風俗や個人の趣味によって作られた枕には自然の木、石、竹の形の変 わったものを利用したり、造形美を考えて作ったものなどの趣味の枕が あるが一般的に使われているものではない。

写真31 亀の木枕 昭和         写真32 自然木(エチオピア)

長さ35.7cm 幅11.2cm 高さ8.4cm    長さ23.4cm 幅14.2cm 高さ16.1cm

           (中央部)

(2) 携帯用枕(旅行用枕、旅枕、道中枕、物入れ枕)

旅行の時に持参する枕、職業上持ち運ぶ枕、非常持出しの貴重品を入れておく枕、道具入れの枕などがある。

1) 小型化した枕

これまでの枕を小型にして携帯しやすくした枕で携帯用としては初期から使用された型で木枕や箱枕が多い。

写真33 箱枕 角形 江戸~大正    写真34 箱枕 安土形 江戸~大正

長さ14.5cm 幅6.4cm 高さ9.2cm   長さ10.5cm 幅上4.0cm 高さ13.4cm

                          下 7.0cm

2) 折りたたみ枕

折りたたんで小さく出来る枕で、組み立てた時の形もX形、Z形、口 形、鳥居形、台形など種類が多く、材質も木、竹、鉄、角、クジラのひげなどがある。

写真35 木製 X形 組み立て時    写真36 折りたたみ時 岐阜県 現代

長さ32.2cm 幅8.0cm 高さ10.0cm   長さ27.8cm 幅8.0cm 高さ5.4cm

写真37 木製 台形 組み立て時    写真38 折りたたみ時

長さ11.5cm 幅8.5cm 高さ12.0cm   長さ14.0cm 幅11.5cm 高さ4.0cm

写真39 木製 Z形 組み立て時    写真40 折りたたみ時

長さ14.0cm 幅4.0cm 高さ12.4cm   長さ18.3cm 幅4.0cm 高さ4.5cm

写真41 竹製 Z形  鳥取県 現代  写真42 木製      沖縄 現代

組み立て時              組み立て時

長さ15.0cm 幅5.2cm 高さ10.0cm   長さ26.0cm 幅9.0cm 高さ7.0cm

折りたたみ時             折りたたみ時     (中央部)

長さ16.3cm 幅5.2cm 高さ5.4cm   長さ26.0cm 幅9.0cm 高さ3.5cm

写真43 クジラのひげ製 組み立て時  写真44 折りたたみ時  江戸~明治

長さ11.5cm 幅6.7cm 高さ12.0cm   長さ15.0cm 幅6.7cm 高さ2.9cm

クジラのひげは丈夫で軽く弾力もあるので珍重された。

写真45 鉄製 組み立て時       写真46 折りたたみ時  明治~大正

長さ18.0cm 幅7.5cm 高さ17.0cm   長さ18.0cm 幅7.5cm 高さ8.5cm

3) 組み立て枕

分解可能な枕で、くくり枕がつけられるが、分解や組み立てに時間が かかることもあって使用例は少ない。(江戸~明治)

写真47 組み立てた時         写真48 分解した時

長さ24.0cm 幅9.5cm 高さ17.5cm   長さ24.0cm 幅9.5cm 高さ11.0cm

4)空気枕

携帯時には空気を抜いてたたむとポケットに入るほど小さくなり、軽 くて丈夫である。昔も今も使われている。ゴム張り布やビニール製のも のなどが主で形も角形、円形、馬蹄形、巻きたたみ形などがある。

写真49 角形 ゴム張り布側製 現代  写真50 馬蹄形 ビニール張り側製 現代

長さ40.0cm 幅27.0cm 高さ8.5cm   長さ34.0cm 幅23.0cm 高さ8.0cm

5)枕兼用の物入れ

職業用、作業用、生活用具兼用として作られたので主要目的が物入れなどで大型のものが多い。

写真51 沖枕 漁具入れ 北海道 大正  写真52 箱枕(枕箱) 漁具入れ                        神奈川県 年代不詳

長さ30.0cm 幅12.4cm 高さ11.8cm   長さ27.0cm 幅12.0cm 高さ13.1cm

写真53 プゾー(フゾウ、フジョー)  写真54 煙草入れ兼用枕  産地不詳

     煙草、小物入れ   沖縄

長さ15.1cm 幅 8.8cm 高さ10.8cm   長さ14.4cm 幅6.8cm 高さ8.5cm

           (中央部)        (中央部) (中央部)

写真55 枕たんす皮張り 江戸     写真56 枕たんす皮張り(中国) 現代

横開き 引き出し2段 錠つき     上開き 皮製中箱 錠つき

長さ40.0cm 幅15.3cm 高さ17.0cm   長さ52.6cm 幅14.2cm 高さ15.5cm

 

非常持出し用の貴重品を収納するので、丈夫で、投げ出されても破損し難い皮製が多い。大型でうるし塗、紋様入りなどがある。錠つきが多い。

写真57 旅枕(道中枕) 江戸     写真58 旅枕(道中枕) 江戸

引き出し2段 上段は隠し戸つき    引き出し2段 隠し戸つき

長さ17.7cm 幅8.5cm 高さ12.1cm   長さ20.4cm 幅7.0cm 高さ12.0cm

           (中央部)

写真59 ポンスオプ(小さな箱)の    写真60 旅枕(道中枕)

   アイヌの箱枕クルミ材上ぶた     ソロバン、アンドン、筆記具な

   ひも蝶つがい             どを入れた枕

長さ40.0cm 幅11.8cm               写真 芦垣慶一氏 提供

高さ(中央部)9.8cm(両端部)11.4cm

上部両端傾斜部各々11.0cmで底部以外  は全部にアイヌ紋様の彫刻がある。

         藤谷憲幸氏 制作

(3) 保健枕(健康枕)

枕は快適な睡眠を得るために工夫され作られているので広義にはすべての枕が保健枕ということができるが、ここでは特定された保健目的を持った枕について記述する。

自分に合った高さに調節できる枕、マッサージ効果を期待した枕、磁器を組み込んだ枕、保冷枕、香枕、生薬枕、ハーブ枕、頭頚部の圧力を平均化した枕、いびき防止枕、幼児の頭部矯正枕、入眠装置付の枕などがある。

1) 高さ調節枕

ギァ式に高さを調節するもの、中材の増減を容易にしたもの、中材入りの小袋を増減するもの、中材パッキン材との組み合わせによるもの、 巻枕によるものなどがある。

写真61 組み木高さ調節枕 ギァ式   写真62 中材パッキン材との組合わせ

    岐阜県 現代              現代

長さ14.5cm 幅14.5cm 高さ12.7~18.0cm 長さ55.0cm 幅36.0cm 高さ 3.010.0cm

写真63 中材の増減を容易にした取り  写真64 ソバ入り平枕

   出し口をつけたもの   現代  長さ40.0cm 幅30.0cm 高さ8.0cm

                              (中央部)

2) 指圧枕

肩・首・頭などの凝りは多くの人が経験する悩みである。これを眠ってい間に予防したり、治したりしようという枕である。

写真65 陶枕 指圧枕         写真66 陶枕 指圧枕

長さ18.0cm 幅10.0cm 高さ7.0cm   長さ20.5cm 幅10.5cm 高さ7.0cm

           (中央部)              (中央部)

写真67 組み木枕 現代        写真68 玉石枕掛 (中国) 現代

長さ30.0cm 幅14.5cm 高さ9.2cm   長さ36.0cm 幅22.0cm 高さ1.8cm

3) 保冷枕

写真69 水枕 ゴム製 現代      写真70 水枕 陶製 昭和

長さ48.0cm 幅21.0cm        長さ23.2cm 幅10.5cm 高さ11.4cm

写真71 水枕 鉄製 年代不詳     写真72 水冷枕 プラスチック製 現代

長さ14.5cm 幅14.0cm 高さ22.0cm   長さ34.0cm 幅21.0cm 高さ6.5cm

中央部の高さ10.0cm~15.0cm(調節可能)

4) 香 枕

写真73 陶香枕 現代         写真74 陶香枕

長さ29.4cm 幅13.0cm 高さ9.5cm   長さ20.8cm 幅11.6cm 高さ7.4cm

                              (中央部)

5) 生薬枕

写真75 抗衰老薬枕(中国 上海)   写真76 黄氏老年降圧枕(中国 内蒙古)

               現代                 現代

6) 磁器枕 

写真77 鉄製 磁器入り 現代     写真78 磁器入り枕 現代

     21.0×15.0×7.0(中央部)       48.0×34.0×10.0

(4) その他

写真79 いびき防止枕用マット     写真80 抱き枕

                       140.0×35.0×22.0

写真81 足枕 現代          写真82 腰枕

    65.0×50.0×10.0           39.0×21.0× 7.0

写真83 詰め物材の展示        写真84 昔の枕の展示


●世界の枕あれこれ

白崎枕コレクションの中から一般には余り見られないものや特徴のあるものなどの一部をのせて、枕について考えるときの参考とした。紙面の都合もあって多くを紹介できないのが残念であるが、僅かでも役に立つようであれば幸いである。

枕の詰め物も古代から現代まで約150種、350個ほどの見本や構造材などの関係する資料、文献などを保管している。

またこれらの一部を展示して常時一般の人にも見て貰えるようにしている。

寸法の表示は長さ、幅、高さの順とし単位はcmとした。特に表記のない限りその枕の中の最大部を表示した。また国名がないものは日本製である。

詰め物枕

写真85 角形 パンヤ入り   タイ  写真86 丸形 パンヤ入り   タイ

    38.6×16.0×16.0           55.0×11.5×11.5

写真87 平形 竹側      台湾  写真88 大形 ポリエステル紡 ドイツ

    30.0×18.0×10.0           73.0×73.0×20.0

写真89 丸形 皮側 木くず      写真90 平形 皮側      中国

    22.0×12.0×11.0           38.0×19.5×11.0

木枕(携帯用)

写真91         東アフリカ  写真92 地面に突立てて使用    

    18.2× 8.0×11.7(中央部)         タンザニア マサイ族

                         12.1× 6.1×19.0(中央部)

写真93 前後にゆれる船底型      写真94              

         ケニア キクユ族         ケニア トルカナー族

    13.2× 7.5×16.5(中央部)      19.2×11.0×17.3(中央部)

写真95      ケニア ポコト族  写真96     ケニア レンデレ族

    27.2× 6.9×10.4(中央部)      6.4× 9.1×14.0(中央部)

写真97     ケニア レンデレ族  写真98 3本足が特徴       

    20.0× 6.5×11.0(中央部)          ケニア レンデレ族

                       26.1×19.4×12.5(中央部)

写真99         エチオピア  写真100         エチオピア

    15.5×11.9×14.6(中央部)      19.4× 7.6×14.7(中央部)

陶 枕

写真101            中国  写真102 大型陶枕       中国

    24.7×16.7× 8.0           38.5×13.4×10.0

写真103            中国  写真104            タイ

    18.5×11.0×10.0(中央部)       21.0×14.5×11.0

写真105 二段重ね物入  シンガポール    写真106            タイ

    30.0×12.5×13.0(中央部)      25.2× 9.0×10.0(中央部)

写真107            中国  写真108 坊主枕と枕掛け

    17.6×10.6× 7.7           25.0×15.0×14.0

写真109            中国  写真110 2段重ね物入り    中国

    17.0× 9.0×11.0(中央部)      13.7×10.0× 8.2(中央部)

その他

写真111 皮枕         中国  写真112 皮枕         中国

    17.8× 9.6×13.5           20.7×23.3× 9.4

写真113 樹枕     シンガポール  写真114 箱枕         韓国

    25.5×16.0× 6.5           26.5×16.3×11.0

写真115 籐枕     インドネシア  写真116 木と竹        韓国

    43.3×12.8×11.7           29.8×11.2×11.0

写真117 木珠         韓国  写真118 木枕     インドネシア

    30.0×15.3×10.4           29.1×14.2× 8.8

写真119 木枕      フィリピン  写真120 木枕      フィリピン

    19.5×14.5× 8.2           28.4×12.5× 4.2(中央部

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